第4回JANCOC会議議事録


(財)日本医薬情報センター 
八重ゆかり      

日時           1997年12月7日(日) 9:00-9:50
場所           名古屋第二赤十字病院 桑山記念研修所
参加者         25名
司会進行       津谷喜一郎(JANCOC代表)

1.JANCOCの過去1年間の主な活動と今後の将来計画

  (1)啓発・教育活動
    ・過去1年にJANCOCが主催/共催したワークショップ、セミナー等
        1997年9月第1回医薬ビジランスセミナー
        1997年12月第1回EBMセミナー
    ・雑誌等へ紹介記事
    ・メディアへの働きかけ

  (2)出版プロジェクト
    ・「Systematic Review」
         8人で分担翻訳し、来年早々出版予定
    ・1997年11月発刊「コクラン共同計画資料集」(初版2,000部)
    ・「Effectiveness and Efficiency」
         結核研究所長の森氏が翻訳し、来年早々出版予定

  (3)コクラン共同計画に関連した出版物等の翻訳に関するコーディネーション
      以下の7つについての翻訳計画がある。だが相互の連絡がよくとれておら
    ず現状の把握ができていない。これまではMedical Technology Assessment、
    Clinical Epidemiologyなどの分野ごと、また各個人でも訳語が異なっている
    場合があった。基本的な用語の統一が必要であろう。そこで、前日12月6日(土)
    に翻訳関係者9名が集まり現状の報告と討議を行った。今後のアクションとし
    て、関連用語の訳のcomparative listを作成することとした。また、作業の
    priorityを数段回に分けることとした。雑誌Evidence-based Medicineに入っ
    ているglossaryあたりがpriorityの高いものであろう。コピーライトなどの
    問題もあり、適切なアクションをとることとなった。

      翻訳計画や作業が進んでいるもの:

    1)Cochrane Libraryの中のCDSR Review List & Abstract
         インターネットまたはCochrane Libraryそのものに日本語で載せようとい
         う計画がある。
    2)Cochrane Libraryの中のWhat's New
         過去2回出されている消費者向けのコクラン・レビューに関する情報誌
    3)Cochrane Library Glossary
         約200語
    4)"Systematic Review"
    5)EBM Glossary
         雑誌Evidence-based Medicineの裏表紙に載っている。約20語。
         本日10:00から開催の第1回EBMセミナー資料に翻訳がすでに入
         っている。
    6)"Evidence-based Medicine"
         主に臨床医向けの本。翻訳版としてはスペイン語、イタリア語、
         ロシア語版などが作成中。
         日本語版作成は徳島大学 久繁哲徳氏を中心に進められている。
    7)"Evidence-based Healthcare"
         主に病院経営者・行政官・大学研究者などを対象とした本。
         医薬ビジランスセンター 浜氏のグループが訳を進めている。

  (4)ハンドサーチ
    ・ハンドーサーチマニュアルの日本語版を作る計画がある。

  (5)Cochrane Library
    ・廣瀬氏の尽力により南江堂が日本代理店になった。
    ・CDSR Review List & Abstractの日本語訳をJANCOCホームページに出
      すこと、またCochrane Libraryそのものに載せることを計画している。

  (6)JANCOC内でのコミュニケイションの強化
    ・JANCOC Contact Directory(名簿)のJANCOCホームページでの公開
      を予定している。これまでDirectoryに収録されている人(約100人)
      に対して、名前、所属、電話など、インターネット上での公開の範囲
      についてアンケートを1997年11月に行った。現在のところ約60人から
      返事がきている。
    ・カナダとオーストラリアのコクランセンター ホームページの国内ミラ
      ーサイトについては、Australasian serverのサイトは国立医薬品食
      品衛生研究所にできた。Canadian serverについては作業中との由。

2.日本の医学データベースの中のRCT関連用語のシソーラスについて

   これまでRandomized Controlled Trial(RCT)の日本語訳は日本の医学文献
  データベースのシソーラスに入っていなかった。JANCOCとしては、無作
  為化比較試験をキーワードとして登録してくれるよう、JICSTおよび医学中
  央雑誌刊行会に働きかけてきた。

 (1)JICSTのシソーラスは5-6年に1回大改訂されるが、1999年の版から、
 「無作為化比較試験」が入る予定である。臨床薬理試験と同じ階層になる
  模様。現在は、以下のようになっている。

  JICST第5版(1993年)
         偽薬(プラセボ)
         交差試験
         比較試験
         臨床試験(臨床薬理)
           臨床薬理試験
             第一相試験
             第二相試験
             第三相試験
             第四相試験
             二重盲検法

      臨床試験のデザインからいうと無作為化比較試験の下位に二重盲検法が入る
    べきであるが、JICSTは工学などを含む広い領域をカバーするデータベース
    であり「二重盲検法」は他の領域でも使われるなどするため、厳密な階層構
    造をつくるのは難しいとのことである。

(2)医学中央雑誌も同じく数年おきに大改定されるが、1999年の版から無作為化
  比較試験を入れる方向で検討中との由。現在の階層構造は以下のようになっ
  ている。JICSTに比べ研究デザインを考慮したものとなっている。どの階層
  に入るかは未定。

  医中誌第3版(1994年)
         医薬品
           Placebo(偽薬、プラセボ)
         疫学調査法
           Study Design
           感受性と特異性
           二重盲検法
         研究特性
           標本調査
           分析研究
             コホート研究
               縦断的研究
                 追跡調査
             症例対照法
             断面調査法
         評価研究
           医薬品評価
           薬物スクリーニングテスト
             抗腫瘍剤効力判定
               腫瘍幹細胞検定
           臨床試験
         薬理学
           薬理学-臨床
            (臨床薬理学)

3.会計報告

    JANCOC balance sheetにもとづいて、1995年11月のJANCOC発足以来
  の会計報告がなされた。2回のワークショップ関連の金の出入りが中心で、
  第1回システマティック・レビュー・ワークショップに約42万円、第1回
  ハンドサーチ・ワークショップでは約13万円の経費がかかった。1997年12
  月現在、約10万円の赤字である。

4.幹事の選出・組織体制について

  (1)幹事

    津谷代表より、作業量が急速に増加してきたためJANCOCにworking force
  となる複数の幹事をもうけたい旨が提案され、原案が示された。討議のあと以下
  のように承認された。なお、当面は以下のメンバーで運営するが、今後、会員から
  の立候補、推薦、意見等により変更する可能性もあることが述べられた。

    ・会員名簿管理及び会計担当
        八重ゆかり
    ・JANCOCホームページ作成及び運営担当
        福井直仁
    ・ワークショップ及びセミナー担当
       (主)名郷直樹、(副)柳元和、(関東地区でもう一人選出するか
        どうかは未定。とりあえず津谷代表が担当する予定)
    ・ハンドサーチ及び翻訳関係担当
        (主)廣瀬美智代、(副)柳元和
    ・日本のレビューアーのコーディネーション担当
        柳元和

  (2)JANCOC組織体制についての意見等
    ・JANCOC規約が必要ではないか、また会費制の導入についても検討して
      よいのではないか?。寄付の申し出があれば受け入れたい。
    ・JANCOCはあくまでゆるやかな人のネットワークなので、規約というの
      はなじまないが、日本のコクランセンター設立時になんらかの設立文書
      が必要となるのでその準備段階のもののドラフトを作成する。
    ・JANCOC会員は特に必要な資格はなく、誰でも入れることを確認。
    ・JANCOCに参加の意志があり、どのような形で参加できるかを知りたい
      人のためにJANCOCの活動内容をホームページでさらに公開する。

5.アドバイザーについて

    約10人のアドバイザーをもうけることとし、以下が提案され了承された。

 (50音順)

    1.  岩尾聰一郎1)(厚生省健康政策局 研究開発振興課長)
    2.  海老原格2)(日本RAD-AR協議会)
    3.  折笠秀樹2)(富山医科薬科大学)
    4.  楠 正2)(日本薬剤疫学研究会)
    5.  清水直容3)(日本臨床薬理学会前理事長)
    6.  野島豊2)(Japanese Association of Medical Doctors in Drug Industries:
                  JAMDI)
    7.  浜六郎2)(Japan Institute of Pharmacovigilance: JIP)
    8.  久繁哲徳2)(徳島大学医学部 公衆衛生学)
    9.  福井次矢2)(京都大学医学部 総合診療部)
   10.  別府宏圀2)(The Informed Prescriber: TIP)

    1)厚生省として医療技術評価を担当する部署であり、この立場としてアドバ
       イザーとなることが第4回JANCOC会議の後、本人から了承された
     2)第4回JANCOC会議の前に、本人より内諾が得られている。
   3)第4回JANCOC会議の後、本人から了承された。

      他に、医療情報関係者も予定している。

6.その他
   ・コクラン共同計画全体の中でのJANCOCの役割について
       コクラン共同計画のSteering Committeeで認知された存在ではない。
     コクラン共同計画はCollaborative Review Groupの作業が中心であるが、
     JANCOCは日本でのコーディネーションと啓発・教育が中心となる。
     すなわち、JANCOCは日本でコクラン共同計画に参加する人々の教育を
     し、またレビューアーやハンドサーチを通してシステマティック・レビュ
     ーのための日本のデータを収集することを目的とする。
   ・将来日本に複数のコクランセンターがあり、いろいろな機能を持ってもよい。
     機能の一つとして、日本でのRCTを収集する、また日本での副作用報告
     を収集するということもある。