JANCOC・TIP・JIP・ユサコジョイントセミナー
「Medlineの使い方とEBMレビュー」参加レポート(Ver. 2.2)


自治医大 地域医療学教室
橋本淳

1. はじめに

 これまでにもコクラン共同計画(The Cochrane Collaboration)やEvidence-based Medicineに関するいくつかのセミナーやワークショップに参加したが、今回JANCOC・TIP・JIP・ユサコが共催で、文献検索と新しい情報データベースについてのセミナーを行うと聞き、1998年6月20日(土)に行われた東京地区のセミナーに参加した。今回行われたセミナーの概要と今後の課題について報告する。

2. セミナーの概要

 東京地区で開催されたセミナーには、当初の予想を上回る82名の参加があった。これまでのセミナーやワークショップでは、医師、薬剤師、研究者が主な参加者であったが、今回は文献検索や新しい情報データベースについてのセミナーであったため、参加者の約1/3がlibrarianであった。

 まず、別府宏圀氏(TIP代表, 都立府中療育センター)からコクラン共同計画についての説明があった。コクラン共同計画について予備知識をもたない参加者も多かったが、各種の情報が氾濫している現状で、「医療関係者、医療政策決定者、消費者がヘルスケアの意思決定を行うために、十分で適正な情報を提供する」というコクラン共同計画の目的は、理解しやすく、また共感できるものであった。

 ついで、名郷直樹氏(愛知県, 作手村国保診療所)、吉村学氏(岐阜県, 揖斐郡北西部地域医療センター久瀬村診療所)から、コクラン共同計画によるシステマティックレビューの情報を提供するための "Cochrane Library" や、優れた論文のみを吟味して掲載している二次資料としての "ACP Journal Club" や "Evidence Based Medicine" 、その内容をCD-ROM化した "ACP Library on disk" や "Best Evidence" などの情報源の有用性や、実際の医療現場での使用方法が紹介された。実際に情報を医療行為に役立てている医師からの、それぞれの情報源の特徴を生かした実践的な使用法の紹介であった。Medlineは網羅的で優れた情報源であるが、情報を利用する立場からみると、必ずしも妥当性の高い情報を提供してくれるわけでなく、入手した情報は吟味して利用しなけれならない。利用者の立場からいえば、自分の知りたい問題に関連した信頼できる情報だけを提供してくれるものがより有用な情報源であり、そのためには各々の情報源の特徴を理解して利用することが重要と思われた。

 後半、ユサコの角田亮子氏によるOvid MedlineとOvid Fulltextの使い方、またOvid社のMs. Kimberley A. Scottより、少し関西弁の入った日本語でEvidence Based Medicine Review (EBMR) の紹介がなされた。これまで、先に述べた情報源は各々独立して提供されていたが、その統合が図られたことがOvid社の提供する新しいサービスの特徴であろう。 EBMRでは、 Cochrane Libraryに含まれるシステマティックレビューのデータベースであるCochrane Database of Systematic Review (CDSR)と、ACP Journal ClubやEvidence Based Medicineなどの雑誌の内容が同時に検索できる。現時点ではシステマティックレビューの結果であるMetaViewのグラフが利用できなかったり、検索にも若干の問題もあるが、これらは今後改善されるであろう。また、Ovid社はMedlineの他に、論文のFull textが利用できるサービスも提供しており、検索しながら元の文献を参照することも可能である。特に図書館にアクセスしにくい環境の人にとっては、非常に有用なシステムである。

3. 今後の課題

1) 妥当性の高いデータベースの普及

 情報の有用性は、関連性、妥当性、労力の3つの要素で評価される (有用性=関連性×妥当性/労力)。Medlineを中心とした従来の情報源では、まず関連性の高い情報を選択し、そのなかで妥当性の高い情報を選択する必要があった。しかし、情報過多となっている現状においては、妥当性の高い情報を集めたCochrane LibraryやACP Library on disk、あるいは今回紹介されたEBMRなどのデータベースから、関連性の高い情報を選択するほうがはるかに効率的である。最近ではこのようなデータベースも整備され、内容も充実しつつある。今後利用者が増えていくことが、データベースを発展させるために重要であろう。

2) 日本語で利用できるデータベース

 MedlineやCochrane Libraryなどのデータベースは、現在のところ英語でなければ利用できない。それはOvid Medline、EBMRでも同様である。日本語の文献についてのデータベースもあるが、検索性や情報の質など課題が多い。医療関係者だけでなく、一般の人にも利用できるデータベースとして広く普及させるためには、日本語で利用できるように整備する必要がある。現在、CDSRについてはアブストラクトの日本語訳とのリンクの計画も進行中とのことであり、今後の活動に期待する。

3) 第2回EBMセミナーへ向けて

 JANCOCでは、昨年1997年12月に第1回EBMセミナーを愛知県臨床疫学研究会と共催したが、本年12月19-20日に自治医科大学において第2回のEBMセミナーを開催する予定である。今回のセミナーの参加者からも、実際に端末を使用して検索したかったとの要望も多く、次回のEBMセミナーでは、小グループのワークショップ形式で、オンラインでの MedlineやEBMRの検索、あるいは Cochrane Library、ACP Library on Diskなどを参加者が実際に使えるようなセッションも設けて行われる予定である。

 なお、第2回EBMセミナーについての問い合わせは下記まで。

 自治医科大学地域医療学教室 第2回EBMセミナー事務局
 FAX : 0285-44-0628   TEL : 0285-58-7394  
 E-Mail: ahashi@jichi.ac.jp