固形臓器移植時の抗ウイルス剤によるサイトメガロウイルスの予防

Cytomegalovirus prophylaxis with antiviral agents in solid organ transplantation

Couchoud C

最終更新日:25/06/1998


目的:固形臓器移植を受けたレシピエントにおいて,抗ウイルス剤が,サイトメガロウイルス感染と症候性疾患を予防するか,急性拒絶反応の発症や臓器喪失,死亡を減らすか,有効性について評価する.

検索方法:MEDLINE,EMBASE,Pascalをコンピューター検索した.最近のレビュー文献の参考文献リストやいくつかの学会抄録集(Transplantation Proceedings,American Thoracic Society,Europian Society of Organ Transplantation)も調べた.

選択基準:成人または小児の固形臓器移植を受けたレシピエントを対象にした前向き,ランダム化比較試験で,治療群はサイトメガロウイルス感染前にアシクロビルまたはガンシクロビルを予防投与されているもの,コントロール群はプラセボまたは何も治療しないものとした.

データ収集と解析:それぞれの試験からデータを抽出し,各研究者にデータを確かめてもらうため,また不足データについての提供を依頼するため,文書を送付した.

それぞれのアウトカムについて,関連についてのカイ二乗検定を行うため,またadditive model(率の差)またはmultiplicative model(オッズ比,相対危険率)を用い,治療効果を95%信頼区間で評価するため,いくつかの方法を使用した.

関連性についてはp値が0.01未満を有意水準とし,均一性についてもp値が0.1未満を有意水準とした.

主な結果:予防的投与はプラセボ群または無治療群と比較して有意にサイトメガロウイルス感染疾患を減らしていた.相対危険度の対数変換でみると(相対危険度 0.51,95%信頼区間 0.41-0.64,χ2検定 p<0.01).予防投与はサイトメガロウイルス感染率も減らしていた(相対危険度 0.62,95%信頼区間 0.53-0.73,p<0.001).我々の解析では,予防投与群での臓器喪失や急性拒絶反応,死亡などの有意な減少を示すことはできなかった.抗ウイルス剤(アシクロビルまたはガンシクロビル)や臓器の種類(腎臓または肝臓)に基づくサブグループ解析では,同等の結果であった.

結論:固形臓器移植時に,サイトメガロウイルス感染とサイトメガロウイルス疾患の予防に抗ウイルス剤を使用することがこのメタ・アナリシスで支持された.


Citation: Couchoud C. Cytomegalovirus prophylaxis with antiviral agents in solid organ transplantation. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:吉村 学/宮本英樹)