切迫性尿失禁の治療に対する膀胱訓練

Bladder training for the treatment of urinary urge incontinence

Roe B, Williams K, Palmer M

最終更新日:26/08/1998


目的:切迫性尿失禁の治療に対する膀胱訓練の有効性を判定する.

検索方法:使用した検索方法はコクラン失禁グループのために開発された.関連した試験は同グループの比較臨床試験特別レジスターより同定され,コクラン・ライブラリーの中で失禁レビューグループの詳細のあとに記述された.

選択基準:試験のタイプ

切迫性尿失禁の治療に対する膀胱訓練についてのすべてのランダム化比較試験と準ランダム化比較試験.

参加者のタイプ

試験者によって定義づけられた症状分類あるいは尿力学的診断により切迫性尿失禁があると診断された全ての成人男性.

介入のタイプ

(i)膀胱訓練ー必須スケジュールまたはセルフスケジュール,患者教育の方法,正の強化,フォローアップを含む.これは膀胱訓練をしない場合と比較された.

(ii)膀胱訓練ー必須スケジュールまたはセルフスケジュール,患者教育の方法,正の強化,フォローアップを含む.これは別の治療法と比較された.

(iii) 別の治療法,特に膀胱訓練に薬理学的なものを加えた方法が膀胱訓練単独の場合と比較された.

データ収集と解析:試験は方法論的な質と選入の適切さについて3人のレヴュアーによって評価された.データは2人のレヴュアーによって抽出され3人目のレヴュアーによってクロスチェックされた.試験のデータは性別と失禁のタイプによるグループを比較した治療によって分析された.つまり症状分類に基づく切迫性尿失禁か尿力学診断に基づく排尿筋不全かである.

主な結果:5つの試験に切迫性尿失禁がある主に女性の対象者が総数179人含まれていた.(そのうち4つの試験で尿力学的に排尿筋不全が確認されている.)4つの試験は独占的に女性を含んでおり1つの試験は少数の男性を含んでいた(Wiseman et al 1991).性別が報告されていなかった3つの主題はこの試験からはずしたので,正確な男性の人数を確認することはできなかった.92人の女性を含む3つの試験は膀胱訓練をした場合としない場合とを比較していた.試験の質は高くなかったが,これは修正された.データは4つのpre-specified outcome に対してのみ入手でき,それぞれ単独の試験からのみ入手できた.これらは膀胱訓練を支持する傾向にあるが長期間フォローアップしたデータは入手できない.

膀胱訓練と薬物療法を比較した試験が1つあった(Jarvis 1981).そして薬物療法で膀胱訓練を補佐する方法と膀胱訓練単独を比較した別の試験もある(Wisemanら, 1991).限られたデータしかなく,結論を得るに十分なエビデンスはない.

結論:人数が少ないこと,規模が小さいこと,質が変動すること,適切な試験の報告が限られていることによりこのレビューの価値は限られている.膀胱訓練は切迫性尿失禁に対して役立つのだろうが,得られるエビデンスに基づくと結論は仮説にすぎない.主観的なデータによれば薬物療法は膀胱訓練に比較して大きな利益を与えないが,これについても得られるデータが少ない.


Citation: Roe B, Williams K, Palmer M. Bladder training for the treatment of urinary urge incontinence. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:糸目千穂/大野茂樹)