腸チフス・ワクチンの有効性と毒性

Efficacy and toxicity of typhoid fever vaccines

Engels EA, Lau J

最終更新日:19/08/1998


目的:入手できる腸チフス・ワクチンの有効性を推定する.

検索方法:公表されている腸チフス・ワクチンのフィールド試験を確認するために,MEDLINEの文献検索を1966年から1996年まで行った.検索においてSalmonella, salmonellosis, typhoid, vaccineをtextwordとして使った.Index Medicus (1955-66),EMBASE,コクラン・ライブラリの検索も行った.検索した試験の参考文献リストから追加の試験を得,あらゆる言語の論文を含めた.

選択基準:この解析に組み込むために,試験は各介入群において腸チフスの件数を報告しているフィールド試験が条件であった.包含した試験は,プラセボか腸チフス以外の疾病に対するワクチンのコントロール群があった.この解析に組み込んだワクチンを3つのクラスに分類した.Ty21aワクチン,Viワクチン,ホールセルワクチンであり,アルコール,ホルマリン,アセトン,加熱によって不活化されている(このクラスのうち加熱による不活化ワクチンのみが現在広く入手できる).

データ収集と解析:それぞれの試験結果から以下の項目について抽出した:ワクチン製剤,投与回数,フォローアップ期間,対象者数,腸チフス症例の数,副作用があった人の数.

それぞれの介入群とフォローアップの年数に対して,発生率(腸チフスのケース/その人の年数)を計算し,それによって発生率比(介入群の発生率をコントロール群の発生率で割ったもの)を計算した.我々はランダムイフェクトモデルを使って,それぞれの試験からの発生率比を結合した.95%信頼区間における有効性の評価がゼロを含まなければ有効性は統計的に有意であると考えた.

同様に,我々はそれぞれのワクチンのクラスに対して3年の累積有効率も計算した.

オッズ比はコントロール治療と比較し,発熱,嘔吐,下痢,注射部位の腫張,欠席または欠勤の副作用に対して計算された.

主な結果:ホールセルワクチンについて,1回投与の方法で最初の2年間に有意に予防効果があった.そして,2回投与の方法で最初の5年間に有意な予防効果があった.

Ty21aワクチンについて,2回投与と3回投与の方法は最初の2年間に有意に予防した.3回投与の方法は,3年目と4年目に関しては予防したが5年目に関しては予防効果は統計的に有意ではなかった.

Viワクチンは接種後最初の2年間予防した.3年目の予防効果(50%)は2年目(52%)と同等だったが3年目の予防効果は有意でなかった.公表された有効性データでフォローアップが3年以上のものはなかった.

3年間の蓄積有効率は,ホールセルワクチンの2回投与では73%,Ty21a の3回投与では51%,Viの1回投与では55%であった.

これらのフィールド試験から副作用のデータは限られているが,全般にホールセルワクチンは新しい Ty21aやViワクチンよりも毒性が強いという印象であった.

結論:ホールセルワクチンはTy21aワクチンまたはViワクチンよりもより長期の予防効果があった.フォローアップのそれぞれの年を別々に調べた時,ホールセルワクチンは5年間,Ty21aは4年間,Viは2年間の統計的に有意な予防効果があった.ホールセルワクチン,Ty21aワクチンを予防接種する回数の少ない方法は,標準的投薬回数の方法ほどの持続した予防効果はなかった.

これらの結果は,ホールセルワクチンに関連した高い毒性とTy21a ワクチンの製剤のバリエーションと投薬量を考慮して考える必要がある.


Citation: Engels EA, Lau J. Efficacy and toxicity of typhoid fever vaccines. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:糸目千穂/浅井泰博)