新生児感染症が疑われたあるいは後に感染症が証明された患者に対する静注用免疫グロブリン(IVIG)

Intravenous immunoglobulin (IVIG) in suspected or subsequently proved neonatal infection

Ohlsson A, Lacy JB

最終更新日:13/08/1998


目的:新生児において感染症が疑われた患者の死亡率/罹患率の減少を目的とした静注用免疫グロブリンの有効性を評価する.第2の解析では,研究の登録時に感染が疑われ,後に感染が確認された新生児の死亡率/罹患率を減少させるためのIVIGの有効性を評価する.

検索方法:MEDLINE,EMBASE,そしてReference Update Databases を1997年11月に,コクラン・ランブラリを1998年7月に次のキーワードを使って検索した:immunoglobulinとinfant-newborn,そしてrandom allocation,あるいはcontrolled trial,あるいはrandomized controlled trial(RCT).確認されたRCTsとメタ・アナリシスの参照リスト,個人的なファイルとScience Citation Index もまた検索された.言語の制限は適用しなかった.未発表のデータは著者に請求し現在までに1人の著者から情報が得られた.

選択基準:研究を選択するために使用した基準は:

1) デザイン:RCT(準ランダム化試験を含む)

2) 新生児(生後28日未満)

3) 介入:細菌/真菌感染症が疑われた患者(そして,幾人かの乳児においては後に証明された)の治療のためのIVIGをプラセボあるいは無介入と比較した.感染症が疑われた状態とは,感染症と一致した臨床症状や兆候があるが原因となる微生物が分離されない状態と定義された.証明された感染症とは:感染症と一致した臨床症状や兆候があり,それと関連して血液培養,脳脊髄液培養,尿培養(恥骨上穿刺によって得られた尿を含む),あるいは通常無菌な組織(たとえば,肝,脾,脳脊髄膜,肺)のどれかから生検により原因菌が分離された状態と定義された.

4)少なくとも次のアウトカムの一つが報告されている:最初の入院中の死亡率;入院期間の長さ;副作用;フォローアップ期間における精神運動発達/成長.

データ収集と解析:2人のレビュアーがそれぞれ別々に重要なアウトカムについての情報を要約し,1人の調査員(AO)が全ての相違を調査してその結果を蓄積した.二分したアウトカムと連続的なデータにおける加重平均差(WMD)を評価するため固定効果モデルを用いて信頼区間(CI) 95% で表した相対リスク(RR) とリスク差(RD)が報告された.RDにおいて統計学上有意な減少を示したアウトカムを表すためにNNTを計算した.準ランダム化試験からのデータは感受性分析においては除外された.

主な結果:研究の質は全般的に低かった.7つの確認された研究(n=208)のうち4つが,臨床的に感染症が疑われてランダム化された全ての患者のアウトカムについて報告していた.死亡率は減少した[RR 0.52 (95%CI; 0.28, 0.98), RD -0.102 (95%CI; -0.005,- 0.199), NNT 10 (95%CI; 5, 200)].準ランダム化試験(n=82)からの結果を除外した場合,感受性分析(n=126)においてRRとRDは同様な値を示した[RR 0.53 (95%CI; 0.25, 1.15), RD -0.106 (95%CI; -0.232, 0.021)]が,統計学上の有意差は認められなかった.

後に感染症と証明された症例におけるIVIGを用いた治療(6つの試験,n=234)は死亡率において統計学上有意な減少を示さなかった[RR 0.62 (95%CI; 0.34, 1.12), RD -0.074 (95%CI; -0.163, 0.014)].感受性分析(n=199)を除いた場合準ランダム化試験(n=35)における結果はわずかに変化した[RR 0.68 (95%CI; 0.36, 1.29), RD -0.059 (95%CI; -0.152, 0.035)].統計学上有意な研究間の不均一性は存在しなかった.

結論:新生児感染症が疑われたあるいは後に感染症が証明された患者の死亡率を抑えるためにIVIGをルーチン化して予防的に投与することを支持するには現在までの調査ではエビデンスが不十分である.

敗血症が疑われた患者に対してIVIGを用いた治療により減少した死亡率,1つの死を阻止する効果の大きさ(NNT 10, 95%CI; 5, 200)の曖昧な評価,そして2次的な統計学的有意性と感受性分析は,今後研究されるべきである.感染の疑われた新生児における有害なアウトカムを減少させるために使われるIVIGの有効性を確証あるいは反論するために,研究者達はよく計画された試験を進んで行っていくべきであろう.特異的な病原菌に対する高濃度の抗体を有したIVIGの予防的投与の役割は評価されるべきだろう.もし,そのような試験が行われるなら,長期間の追跡と費用-効用面での評価を含むデザインで行うべきであろう.


Citation: Ohlsson A, Lacy JB. Intravenous immunoglobulin (IVIG) in suspected or subsequently proved neonatal infection. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:高口恵子/糸矢宏志)