便潜血反応を用いた結腸・直腸癌のスクリーニング

Screening for colorectal cancer using the faecal occult blood test, Hemoccult

Towler BP, Irwig L, Glasziou P, Weller D, Kewenter J

最終更新日:16/01/1998


目的:便潜血反応を用いたスクリーニングによって,結腸・直腸癌を原因とする死亡率が減少するか否かを判定し,スクリーニングの利点と害を考える.

検索方法:レビューに用いた出版,未出版のデータは以下のようにして確認された.

1.1995年に著者の数人が処理したシステマティック・レビューに用いた研究を引き出す.

2.MEDLINE,Current Contents,コクラン比較臨床試験レジスターを検索する.

3.試験担当者に手紙を書く.

選択基準:潜血反応を用いた結腸・直腸癌のスクリーニングに関する全ての比較試験は,レビューに含むのに適切であった.

データ収集と解析:試験からのデータは2人の著者が独立して抽出した.

データ解析は,これまでにスクリーニングを受けたことがあるなしに関わらず,割付けられたグループを対象に"intension to screen"のもとで行った.

結腸・直腸癌による死亡率に対する,潜血反応を用いたスクリーニングの効果を評価するために,各試験における相対リスクとリスク差を計算し,全体として,固定効果モデルとランダム効果モデルを用いて効果の不均一性を調べた.全ての試験を含む効果測定,およびランダム化比較試験だけを含む効果測定を計算した.

また各試験のスクリーニング参加者を調節し,略式の効果測定を計算した(Mete-viewには表れていない).

主な結果:ランダム化比較試験から得た死亡率の結果のメタ・アナリシスによって,スクリーニングに割付けられたグループでは,結腸・直腸癌による死亡率が16%減少したことが示された(RR 0.84,CI:0.77-0.93).

個々の研究におけるスクリーニング参加者を調節した場合,死亡率は23%減少した(RR 0.77,CI:0.57-0.89).

全体として10,000人が2年に1度便潜血スクリーニングプログラムへの参加をすすめられ,2/3が少なくとも1回潜血試験を受けるとすれば,10年間で8.5人の結腸・直腸癌死が予防できる(CI:3.6-13.5).

しかし,スクリーニングプログラムは,大腸内視鏡検査1例のために少なくとも2,800人の参加が必要であり,Minnesotaの試験におけるスクリーニングの害から考えると,3.4人が合併症(穿孔,出血)が生じるであろう.Goteborgの試験におけるスクリーニングの害から考えると,1例のS状結腸内視鏡検査及びバリウム注腸二重造影検査のために約600人が必要であり,1.8人が穿孔あるいは出血を合併する結果となる.

結論:スクリーニングの利点は,結腸・直腸癌による死亡率の減少,結腸・直腸腺腫の発見と摘出による癌の発生の減少であり,早い時期の治療はより侵襲の少ない手術となる.

スクリーニングの有害な点は,結腸内視鏡検査による合併症であり,ライフスタイルの破壊,ストレス,検査に対する不快感,検査で偽陽性であった時に生じる不安である.

結腸・直腸癌のリスクが高い集団にとっては,スクリーニングの利点は害に勝るであろうが,スクリーニングの有害な効果についてさらに情報が必要であり,スクリーニングが広く行き渡る前に異なるヘルスケアシステムとしてのスクリーニングとそのコストに対する社会の反応についての情報が必要である.


Citation: Towler BP, Irwig L, Glasziou P, Weller D, Kewenter J. Screening for colorectal cancer using the faecal occult blood test, Hemoccult. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:秋山香乃/古賀義規)