故意の自傷行為:心理社会的および薬理学的治療の有効性

Deliberate self-harm: the efficacy of psychosocial and pharmacological treatments

Hawton K, Arensman E, Townsend E (continued in acknowledgements)

最終更新日:12/05/1998


目的:故意に自分自身に危害を加える患者の治療の有効性を調査したすべてのランダム化比較試験を同定し,総合する.

検索方法:次のデータベースを探索した:MEDLINE(1966年から1996年5月),Psyclit(1974年から1996年7月),EMBASE(1980年から1996年8月),コクラン比較臨床試験レジスター(CCTR)の1997年のNo.4.精神医学と心理学の分野での10の雑誌をハンドサーチした.論文の参考文献リストがチェックされ,試験担当者と連絡をとった.

選択基準:故意の自傷行為という用語に普通含まれている,故意の服毒または自傷を,臨床研究にエントリーされる直前に行った患者のアフターケアにおいて,心理社会的および/または薬理学的治療と,標準的またはより密度の低い治療とを比較した全てのRCT.

データ収集と解析:データは,二人のレビュアーによって,独立して,原論文から抽出された.研究は治療のタイプに従って分類された.故意の自傷行為に対する治療の介入の有効性を評価するために使用されたアウトカムは,繰り返される自殺行為の割合であった.将来は,他のアウトカム(例えば,治療遵守率,抑うつ,絶望,自殺念慮s,問題および問題を解決することについての変化)が検討されるべきであろう.

主な結果:故意の自傷行為の反復をアウトカム変数とした臨床試験が全てで20件同定された.その試験は10のカテゴリーに分類された.要約オッズ比は,標準的なアフターケアに比べて問題解決療法の方が(0.73, 0.45-1.18),また標準的なアフターケアのみに比べて標準的なケアに加えて非常時の連絡カードを供給した方が(0.45, 0.19-1.07),故意の自傷行為の繰り返しを減少させる傾向を示した.要約オッズ比は,標準的なアフターケアに比べて現場への往診(outreach)を含む徹底したアフターケアの試験で 0.83であり(0.61-1.14),プラセボに比べて抗うつ治療では 1.19(0.53-2.67)であった.比較の残りのものは,単一の小規模の試験であった.自傷の反復が有意に減少していることが,自傷行為の常習者において,フルペンチキソールのデポ製剤対プラセボで認められ(0.09, 0.02-0.50),弁証法的行動療法対標準的なアフターケアで認められた(0.24, 0.06-0.93).

結論:自傷の患者に対してどのような心理社会的ないし身体的な治療がもっとも有効であるかについてはかなりの不確実性がある.十分な患者数を臨床試験に含めることが出来ないことがその主たる原因である.故意による自傷の繰り返しの割合を減らす傾向を示した治療について,および統計的に繰り返しが有意に減少したことを示した単一の小規模な試験での治療について,より大規模な臨床試験が必要である.


Citation: Hawton K, Arensman E, Townsend E (continued in acknowledgements). Deliberate self-harm: the efficacy of psychosocial and pharmacological treatments. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:六車浩史/古川壽亮)