一回投与による運動誘発性気管支収縮の予防的治療としてのネドクロミルナトリウム

Nedocromil sodium as single dose prophylactic treatment of exercise-induced bronchoconstriction

Spooner CH, Saunders LD, Rowe BH

最終更新日:27/05/1998


目的:運動によって誘発される気管支収縮を防ぐための,ネドクロミルナトリウム(NCS)一回投与の有効性と安全性を評価すること.

検索方法:コクラン気道レビューグループの「Asthma and Wheez* RCT」レジスターと,Current Contents, コクラン比較臨床試験レジスターをコンピューター検索したところ,適切な研究やレビュー,教科書等の図書目録を得た.公表,非公表,研究中を問わず,以下の基準を満たす試験をより多く見つけるために,関連分野を研究している製薬会社や論文執筆者らとの個人的な交流も捜し求めた.言語は制限しなかった.

選択基準:EIBの予防的な治療として,NCSの一回投与とプラセボとを比較したランダム化双盲比較試験が望ましい.研究は,次の条件が満たされていれば含まれる.すなわち:参加者が確実なEIBを有しており,EIBを起こすのに十分な運動負荷を受け,そして肺機能の測定が1秒量(FEV1)か呼気流量のピーク(PEFR)の変化として報告されている.

データ収集と解析:評価された主な結果は,運動,あるいはNCSの副作用によって引き起こされたFEV1とPEFRの変化であった.肺機能の変化は,運動前後でFEV1とPEFRの最大値が平均何パーセント(%)落ちるか,あるいは平均値が何%落ちるかと言う形で,その都度報告された.方法論的な質の評価とデータ抽出は,標準的な評価方法と有効な評価基準を用いる2人の評論家によって,別々に導かれた.データをミスする場合には,包括された他の研究から得られた評価基準が使われた.いくらかの結果は,グラフから推定された.研究方法論とデータ抽出の確認は,初期の著者から可能であるかぎり得られた.同様の研究からの結果は,ランダム効果モデルを使う加重平均差(WMD)として,一緒に報告された.

主な結果:51の適切と考えられた試験中,20が包括基準を満たしており,280人分の参加者のデータが用意された.NCSは,スペーサーがあろうとなかろうと,計られた分量の吸入器を使って,標準化された運動負荷試験の15から60分先に,1から8mg,投与された.NCSの投与により,EIBの重症度が,成人でも子供でも著明に抑制された.FEV1の最大の%落下のためのWMDは,15.6%(95%Cl 13.2,18.1)であり,予防効果は51%(95%Cl 46,55)プラセボの上であった.PEFRの最大の%落下のためのWMDは,15.0%(95%Cl 8.3,21.6)であり,予防効果は同様のレベルであった.普通の肺機能に戻る平均的な時間は縮められたことを示す追加の証拠があった.NCSを使った場合,運動負荷後の回復時間が10分より短かかったのに対して,プラセボ投与群では30分以上かかった.NCSの抑制的な効果の大きな違いは,EIBの重症度によるサブグループ分析(%フォールインデックスが30%より少ない群と30%,もしくはそれより多い群)の上で実証された.軽症EIBにおいては,FEV1の最大の%落下のためのWMDは,12.8%(95%Cl 10.0,15.7)であった一方,重症のEIBでは21.4%(95%Cl 17.2,25.5)だった.同様の所見は,PEFRにおいても実証された.NCSの短期投与による目立った副作用の報告は,認められなかった.

結論:NCSの予防的投与は,特にEIBの重症度と持続の抑制に効果的である.この利益は,より重症のEIB患者にとって大きい.EIBにおいて,NCSとNCSに代わる薬剤との比較研究が,さらに必要である.


Citation: Spooner CH, Saunders LD, Rowe BH. Nedocromil sodium as single dose prophylactic treatment of exercise-induced bronchoconstriction. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:中村和宏/野澤崇志)