サルモネラの消化管感染における抗生物質

Antibiotics in salmonella gut infections

Sirinavin S, Garner P

最終更新日:12/05/1998


目的:便からサルモネラが培養された下痢患者に対しての日常的な抗生物質使用の方針を評価する.下痢の期間,他の消化管症状,発熱,全身的な合併症,経過観察時の培養の陽性率,耐性菌の出現,治療の副作用についてアウトカムを調べた.

検索方法:症候性,無症候性のサルモネラ感染に対する抗生物質療法のあらゆる比較試験,ただし S.typhi, S.parayphi, typhoid, paratyphoid による感染は除く.コクラン比較臨床試験レジスター(コクラン・ライブラリ, 1997年第3版として出版),1980年から1997年までのMEDLINE,ExtraMedが調べられた.関連する別な研究のために可能なすべての試験の参考文献が調べられた.言語の制限はない.

選択基準:薬物治療に関するすべての試験はプラセボまたは別の実薬と比較されていた.ランダム化比較試験(RCT)と偽ランダム化比較試験(たとえば数の繰り返し)が含まれていた.オープン試験,ケースレポート,コホート研究は除外した.

データ収集と解析:割付けの隠蔽が評価された.2人のレビュアーが標準の形式を使用して,独立してデータの抽出を行った.不一致な部分は議論により解決した.

主な結果:366人の乳児と小児が含む,857人が参加した15の試験が採用された.研究された薬物はネオマイシン,クロラムフェニコール,アンピシリン,アモキシシリン,コ・トリモキサゾール,ノルフロキサシン,フレロキサシン,シプロフロキサシンであった.いずれの抗生物質療法とプレセボの間にも疾病期間の明らかな違いはみられなかった(pooled WMD -0.07 days, 95%CI -0.55, 0.40).下痢の期間(pooled WMD -0.03, 95%CI -0.53, 0.48),発熱 (pooled WMD -0.45, 95%CI -0.98, 0.08)についても明らかな違いはみられなかった.治療の最初の1週は抗生物質療法により培養が陰性に出やすいという結果になった.再発は抗生物質を投与されたほうがより頻度が高かった.3週間後の培養ではプラセボ群より抗生物質投与群のほうが陽性になるケースが多かった.薬物の副作用は抗生物質投与群で多かった(pooled OR 1.67, 95%CI 1.05, 2.67).同じような結果が5-フルオロキノロンとプラセボを比較した研究でも得られた.

結論:臨床的なアウトカムを改善する療法はなかった.しかし,便中のサルモネラの検出が延長したり,薬物の副作用が増加する傾向はあった.研究には免疫無防備状態の宿主や新生児は含まれなかった.乳児と小児においてキノロン薬による治療の情報はなかった.


Citation: Sirinavin S, Garner P. Antibiotics in salmonella gut infections. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:糸目千穂/八森 淳)