結核症に対するマイコバクテリアワクチンの免疫療法

Mycobacterium vaccae immunotherapy for TB

de Bruyn G, Garner P

最終更新日:12/05/1998


目的:結核患者の薬物治療への反応の改善ついて,マイコバクテリアワクチンが有効か,また,この介入(治療)に耐えうるかを評価する.

検索方法:ワクチンと結核症についてのMEDLINE検索,コクラン比較臨床試験レジスター,専門家との連絡,発表されたレビューや試験の参考リストの検討.

選択基準:結核患者に対するマイコバクテリアワクチンによる免疫療法を評価したランダム化および偽ランダム化比較試験.確認された5つの小規模な試験のうちの3つが組込み基準を満たしていた.

データ収集と解析:抽出したデータ:死亡,1,2,3カ月での喀痰の塗抹標本の変化,化学療法終了時の喀痰培養の陰性,スコア化により評価されたCXR所見の変化,赤血球沈降速度(ESR),体重の増加または変化,ツベルクリン皮膚試験の変化,および局所的,全身的そして免疫学的な有害作用.

主な結果:2つの試験において,開始後11カ月までの死亡が報告された.参加者数は少なかったが,免疫療法施行群と対照群の間で死亡数には差はなかった.2つの試験では,化学療法2カ月での喀痰塗抹標本の陰性(率)と,化学療法終了時での喀痰培養陰性率は,免疫療法を受けた患者について有意には改善されなかった.免疫療法施行群での ESRの有意な低下が1つの試験で報告された.

有意な差がみられなかったのは:開始時,化学療法終了時および化学療法終了後6カ月での胸部X線写真で空洞を有する患者数,X線写真のスコア,化学療法終了時のツベルクリン皮膚反応の陽性(率)であった.再治療の必要をさける観点から,免疫療法の保護効果の可能性があることが2つの試験で報告された.

結論:マイコバクテリアワクチンによる免疫療法については,治療の試験的な形式を考慮すべきである.現在の入手できる証拠では,マイコバクテリアワクチンによる免疫療法が益が害をまさるかどうかを決定するには不十分であり,また,最近完了した2つの試験の結果が現在のあいまいさを明らかにするのに役立つであろう.HIV に感染した人に用いられる免疫療法の安全性についても注意が向けられるべきである.


Citation: de Bruyn G, Garner P. Mycobacterium vaccae immunotherapy for TB. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:六車浩史/八森 淳)