新生児の呼吸窮迫症候群における合成サーファクタント治療

Synthetic surfactant treatment for preterm infants with respiratory distress syndrome

Soll RF

最終更新日:22/05/1998


目的:確立した呼吸窮迫症候群(RDS)の未熟児への合成サーファクタントの気管内投与の効果を評価する.

検索方法:検索は出生時試験のオックスフォードデータベース,MEDLINE (MeSH term:pulmonary surfactants,limit age group:newborn infant,publication type:clinical trial),リファレンスを含む以前のレビュー,総説,会議とシンポジウムの予稿集,専門的情報者,ハンドサーチで探した英語の雑誌から行った.

選択基準:呼吸窮迫症候群の新生児の治療においてルーチンな管理と合成サーファクタント治療の効果を比較したランダム化比較試験.

データ収集と解析:気胸,間質性肺気腫,肺出血,動脈管開存,壊死性腸炎,未熟性による無呼吸,脳室内出血(どんなグレードも,また重篤な脳室内出血),気管支肺異形成熟,新生児の死亡率,気管支肺異形成熟対死亡率,未熟児網膜症(どんな網膜症も,またステージ3以上の網膜症),病院退院時の死亡率,1歳までの死亡率,脳性麻痺(少しでも,また中等度/重篤な脳性麻痺)の出現率を含む臨床的結果に注目したデータが批評家によって臨床試験の報告から抜粋された.データはコクラン新生児レビューグループの基準に従って分析された.

主な結果:確立した呼吸窮迫症候群の合成サーファクタント治療の6つのランダム化比較試験が確認された.5つの研究はExosurf Neonatalを使っている(ジパルミトイルホスファチジルコリン,ヘキサデカノール,チロキサポールで構成された合成サーファクタント);1つの小規模な研究はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)とホスファチジルグリセロール(PG)の混合物を利用した.確立した呼吸窮迫症候群の早産児への気管内Exosurf Neonatal治療は肺のガス交換を改善し換気補助の必要性を減少させた.個々の試験では,Exosurf Neonatalの使用は気胸,動脈管開存,気管支肺形成異常(BPD),28日目のBPD対死亡率,死亡率の統計学的有意な減少が結果として生じた.Exosurf Neonatalの大規模な試験をDPPCとホスファチジルグリセロール(PG)のドライパウダーの小規模な試験と共に分析した時も同様の結果がみられた.気胸の危険性の減少(典型的相対危険度0.64, 95%CI 0.55, 0.76,典型的危険差-0.09, 95%CI -0.12,-0.06),間質性肺気腫の危険性の減少(典型的相対危険度0.62, 95%CI 0.54, 0.71,典型的危険差-0.12, 95%CI -0.16, -0.09)動脈管開存の危険性の減少(典型的相対危険度0.90, 95%CI 0.84, 0.97,典型的危険差-0.06 95%CI -0.10, -0.02),脳室内出血の危険性の減少(典型的相対危険度0.88, 95%CI 0.77, 0.99; 典型的危険差 -0.04, 95%CI -0.08, -0.00),気管支肺異形成熟の危険性の減少( 典型的相対危険度0.75, 95%CI 0.61, 0.92; 典型的危険差 -0.04, 95%CI -0.06, -0.01),新生児の死亡率の危険性の減少(典型的相対危険度 0.73, 95%CI 0.61,0.88; 典型的危険差 -0.05, 95%CI -0.07, -0.02),28日目の気管支肺異形成熟対死亡率の危険性の減少,(典型的相対危険度 0.73, 95%CI 0.65,0.83; 典型的危険差 -0.06, 95%CI -0.11, -0.05),退院前の死亡率の危険性の減少(典型的相対危険度 0.79, 95%CI 0.68, 0.92; 典型的危険差-0.05, 95%CI -0.07, -0.02),1歳までのの死亡率の危険性の減少(典型的相対危険度0.80, 95%CI 0.69, 0.94; 典型的危険差 -0.04, 95%CI -0.07, -0.01)がメタ・アナリシスによって支持された.合成サーファクタント治療は未熟児の無呼吸の危険性を増加させた(典型的相対危険度 1.20, 95%CI 1.09, 1.31; 典型的危険差 0.08, 95%CI 0.04, 0.12).

結論:確立した呼吸窮迫症候群の乳児に合成サーファクタントの気管内投与は臨床的結果を改善することが立証された.合成サーファクタントの治療を受けた乳児は,気胸の危険性の減少,間質性肺気腫の危険性の減少,脳室内出血の危険性の減少,気管支肺異形成熟の危険性の減少,新生児死亡率の危険性の減少,退院前と1歳までの死亡率の危険性の減少がみられた.確立したRDSに対して合成サーファクタント治療を受けた乳児は未熟性による無呼吸の危険性の増加がみられた.


Citation: Soll RF. Synthetic surfactant treatment for preterm infants with respiratory distress syndrome. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:大西優里/加藤太一 )