インドメタシン治療を受けた症候性動脈管開存児におけるフロセミド

Furosemide in indomethacin-treated infants with symptomatic patent ductus arteriosus

Brion LP, Campbell DE

最終更新日:20/05/1998


目的:1)未熟児の症候性動脈管開存症に対するインドメタシン治療において閉鎖不全が起こる頻度に,フロセミド投与が与える影響について

2)フロセミドの併用が,インドメタシンの副作用である腎障害,電解質以上の発症率に影響を及ぼすかどうかを評価すること

3)腎機能,水のバランスに対するフロセミドの効果が細胞外液量に依存するものであるかどうか評価すること

検索方法:1998年1月下記のデータベースを使用し言語の制限なしに電子的な文献検索を行った.MEDLINE (1966-1998),EMBASE(1974-1998), Reference Update (1998),コクラン・ライブラリ (1997 Issue 3).また手作業で1991年 から1998年に間の小児科学研究領域で出版されたすべての抄録を再調査した.

選択基準:症候性動脈管開存症の未熟児がランダムに割付けされ,インドメタシン単独か,インドメタシンとフロセミドの療法の投与を受けた研究のみを選んだ.またこの研究には,フロセミドの治療に対する動脈管の反応に与える影響についてか,あるいは,腎機能の与える影響についての情報が含まれてなければならない.

データ収集と解析:おのおのの研究の適格性についての方法論的評価は,選択バイアス,遂行バイアス,自然減バイアス,検出バイアス,動脈管の開存の正確な評価といった観点に基づき行われた.

アウトカムの可変性は下記のものを含んでいる.

a) 1-3回のインドメタシン投与後,動脈管開存症が無反応であった頻度

b)インドメタシン投与後12時間以内の尿素量,ナトリウム排泄率,浸透圧および自由水クリアランス,電解質,浸透圧といった腎機能

c)動脈管開存症の閉鎖不全の頻度およびインドメタシン投与前のBUN/Cr比に基づいて設定されたカテゴリー(それぞれ30以上,20-30,20mg/ml以上,80-120,80mM/mM以下)内での腎機能

メタ・アナリシスは,カテゴリーの変わりやすさ(管の閉鎖不全)による相対的なリスクとリスクの差と,連続的な変化による加重平均差を用いてなされている.なぜなら個々のデータは入手不可能で,治療前の平均BUN/クレアチニン比に基づいて我々はランダム化試験自身を部分集合に分類した.研究中では,インドメタシンの投与量は1から3の間の変化である.管の閉鎖のデータは治療の最後の後にのみ入手可能である.一方腎機能のデータはすべての研究において,インドメタシン最初の投与の後から入手可能である.それゆえ治療の最後の後に管の閉鎖のメタ・アナリシスを行い,腎機能はインドメタシン最初の投与の後行った.我々はその後インドメタシンのすべての過程の後で獲得されたメタ・アナリシスの結果を比較した.

主な結果:研究の評価:3つの研究が選定基準を満たしていた.インドメタシンは2つの研究では経静脈的に投与され,1つの研究だけが経口的に投与されていた.1つの研究だけが割付けの隠蔽を考証しており,すべての研究に少なくともいくつかの制限があった.分析可能なランダム抽出された患者の総合計は70人(各グループ35人ずつ).

動脈管の閉鎖不全の頻度に対するフロセミドの影響:フロセミド投与はインドメタシン治療後の管の閉鎖不全のリスクを有意に増加させなかった.[集積相対リスク 1.41 (95%CI 0.68, 2.94)そしてリスク差 0.10(95%CI -0.11, +0.30)].しかしながらこのメタ・アナリシスに含まれる患者総数では,臨床的には重要な逆効果(動脈管の閉鎖不全)を除外するには不十分であることは明白であった.

腎機能におけるフロセミドの効果:フロセミドの腎臓への効果についてのメタ・アナリシスはインドメタシン一回と投与後に行われた.インドメタシン初回投与後の尿排泄量は対照群よりフロセミド投与グループの方が高い加重平均差1.34ml/kg/hour (95%CI 0.72, 1.96).インドメタシン初回投与後のナトリウム排泄率は対照群よりフロセミド投与グループの方が高く加重平均差 3.54% (95%CI 2.05, 5.03)であった.浸透圧クリアランスは対照群よりフロセミド投与グループの方が高い.クレアチニンクリアランスの加重平均差は0.39 ml/min/100 ml(95%CI 0.19, 0.59).

平均BUN/Cr比に基づいて研究を分類したことで2つのサブセットができた.サブセット1(平均BUN/クレアチニン比25.6から0.8 [平均標準偏差] mg/mg)のフロセミド投与の患者においては,インドメタシン初回投与後,対照群よりクレアチニンクリアランスが有意に低かった.加重平均差 -3.00 (95%CI -5.39,-0.61).インドメタシンの3回投与 の間,フロセミドの投与患者には持続的な利尿,重量減少そして血清クレアチニン値の増加が見られた.インドメタシン初回投与後,対照群の患者より,クレチニンクリアランスが有意に高かった. 加重平均差 2.45 (95%CI 0.39, 4.51).

結論:実施:

このレビューのために利用することができた研究は貧弱であろ,たとえバイアスがかかっていなかったにせよ,母集団が小さかった.動脈管の閉鎖と腎機能のほかには,他の重要な結果については情報がなかった.3つのうち2つの研究は10年以上も前に行われたものであり,このことは治療実践が劇的に変化している可能性もあることを示唆している.

症候性動脈管開存症のインドメタシン治療を受けている未熟児にフロセミドを投与することを支持する決定的な根拠を提供するには,この系統的レビューは不十分であった.このように少ない参加患者総数では,インドメタシン初回投与後,フロセミドの投与が,動脈管の閉鎖不全のリスクを30%にまで(絶対リスク差)増加させたときも,11%までに減少させたとも言えよう.

フロセミドは初期のBUN/クレアチニン比にかかわらず尿排泄量を増加させる.脱水状態(BUN/クレアチニン>20 mg/mg または >80mM/mM)の患者において,利尿は脱水状態を目立たせ,腎糸球体機能を低下させる.従って脱水状態は,症候性動脈管開存症のインドメタシン治療を受けている未熟児におけるフロセミド投与は禁忌と思われる.

調査:

フロセミドがインドメタシン治療における有効な併用剤かどうかは,十分な盲験による多施設間のランダム化臨床試験によってのみ評価される.動脈管の閉鎖不全のリスクが10%増加することを検出するための90%の検定力を有するためには( two-tailed カイ二乗分析 を用い,対照群において22%の管の閉鎖不全を呈す. alpha error 0.05)少なくとも各群413 人の患者を含むべきである.この研究では,現行のインドメタシン投与法ーすなわち,緩徐静注もしくは持続点滴静注により3回投与ーを使用すべきであるとしている.もしも,現在の研究で,インドメタシンあるいはイブプロフェンの緩徐もしくは持続点滴静注が,多数の患児において優れた効力と限られた腎毒性しか示さないことが分かれば,そのような研究は不必要であるかもしれない.


Citation: Brion LP, Campbell DE. Furosemide in indomethacin-treated infants with symptomatic patent ductus arteriosus. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:岡野愛子/anonymous、岡田 隆)