急性や慢性の疼痛の管理のための鎮痙剤

Anticonvulsant drugs for the management of acute and chronic pain

Wiffen P, McQuay H, Carroll D, Jadad J, Moore A

最終更新日:23/07/1997


目的:疼痛の管理における鎮痙剤の有効性や副作用のシステマティック・レビュー.

このレビューの目的は,臨床現場に対してエビデンスに基づいた提言をしたり,臨床研究の方向性を決めるために,鎮痙剤の除痛効果をプラセボや他の薬剤と比較して評価することである.

検索方法:急性,慢性,癌性の疼痛に対する,鎮痙剤のランダム化比較試験が,MEDLINEによる検索,ハンドサーチ,参考文献リストによる検索,調査者との接触によって行われた.

選択基準:一次又は二次のアウトカムとして疼痛の評価を行っている鎮痙剤の除痛効果を調べたランダム化比較試験であれば,このレビューに含めた.

データ収集と解析:治療必要数(NNTs)を,有効性,副作用,薬物に関連した調査の中止の二分的データから,それぞれの研究および,プールしたデータに関して,計算した.

主な結果:4つの鎮痙剤に関する20のランダム化比較試験が,適格であると考えられた.急性疼痛に対するプラセボ対照に限った試験では,バルプロ酸ナトリウムの除痛効果がなかった.

三叉神経痛に対するカルバマゼピンの3つのプラセボ比較試験をあわせると,有効性に関するNNTは2.6,副作用に関して3.4,重篤な影響(研究の中止)に関して24となった.糖尿病性神経症に対する3つのプラセボ対照研究では,NNTは有効性に関して3,副作用に関して2.5,重篤な効果に関して20となった.片頭痛予防の3つのプラセボ比較試験では,NNTは,有効性に関して2.4,副作用に関して2.4,重篤な効果に関して39となった.

フェニトインは過敏性腸症候群には効果がなく,カルバマゼピンは脳卒中後の疼痛にはほとんど効果がなかった.クロナゼパムは,顎関節の機能障害に関する一つの研究で有効であった.

鎮痙剤間の比較をした研究はなかった.鎮痙剤は,他の治療薬に対して重要でなくなってきた.

結論:鎮痙剤は,慢性の疼痛に広く用いられているにもかかわらず,驚いたことに,除痛効果を示すランダム化比較試験はほとんどない.異なる鎮痙剤を比較したランダム化比較試験はない.鎮痙剤が急性の疼痛に有効であるという証拠はない.三叉神経痛以外の慢性疼痛では,鎮痙剤は,他の介入を試すまで見合わせたほうがよい.


Citation: Wiffen P, McQuay H, Carroll D, Jadad J, Moore A. Anticonvulsant drugs for the management of acute and chronic pain. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:野崎香織/宮本英樹,橋本 淳)