気分変調症の治療のための薬とプラセボの比較

A comparison of drugs versus placebo for the treatment of dysthymia: a systematic review

Lima MS, Moncrieff J

最終更新日:05/01/1998


目的:気分変調症は,大うつ病ほど重症ではないが慢性の抑うつ性障害で,その抑うつ症状はだいたい少なくとも2年は続く.このレビューの目的は,気分変調症に対する薬とプラセボのすべてのランダム化比較試験のシステマティック・レビューを行うことである.

検索方法:コクラン・ライブラリー,EMBASE,MEDLINE,PsycLIT,Biological Abstracts,LILASCの電子検索.参考文献の検索;個人的接触;学会抄録;製薬企業からの未発表の試験;うつ病の治療についての単行本.

選択基準:包含基準は,気分変調症患者の薬物対プラセボの使用に注目したすべてのランダム化比較試験.除外基準は,ランダム化されていないもの,うつ病と気分変調症の混在したもの(両者を区別したデータが得られない試験),他の障害(例えば物質乱用)に2次的なうつ病.

データ収集と解析:レビュアーは互いに独立にデータを抽出した.intention-to-treat分析をするために,死んだ人もしくは脱落した人は改善しなかったものと想定された.臨床試験の著者には,付加的なまた紛失しているデータのために連絡を取った.各著者の定義による治療反応の欠如を主たるアウトカム変数とした.二値データの相対危険度と95%信頼区間は,ランダム効果モデルによって推測された.可能であれば,相対危険度減少の逆数を計算することによって,効果発現必要症例数(NNT)と副作用発現必要症例数(NNH)を求めた.

主な結果:現在レビューは15の試験を含む.三環系(TCA),選択的セロトニン再吸収阻害剤(SSRI),モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI),その他の薬(スルピリド,アミネプチン,リタンセリン)のような違ったグループの薬物でも効果の点からは同様の結果が得られた.TCA治療による治療反応の欠如について,合算した相対危険度は0.68(95%信頼区間は0.59-0.78)で,NNTは4.3(95%信頼区間は3.2-6.5)であった.SSRIはこのアウトカムについて似た相対危険度を示した;0.64(95%信頼区間は0.55-0.74),NNTは4.7 (95% 信頼区間は3.5-6.9).MAOIに関しては,相対危険度は0.59(95%信頼区間は0.48-0.71)でNNTは2.9(95%信頼区間は2.2-4.3)であった.その他の薬(アミスルプリド,アミネプチン,リタンセリン)は治療反応の欠如というアウトカムについて似た結果を示した.完全寛解という,より厳重な基準を用いた場合,結果は不変であった.プラセボと比較して,TCAでの治療を受けた患者は,有害反応が報告されがちであった.

結論:気分変調症の治療では,異なったクラスの薬剤の間でも,各クラスの薬剤の間でも差異はなく,薬物は有効である.三環系抗うつ剤は,有害反応や治療脱落を引き起こすことがより多かった.気分変調症は慢性の病気であるが,生活の質について,また中・長期的な転帰についてはほとんど情報がない.


Citation: Lima MS, Moncrieff J. A comparison of drugs versus placebo for the treatment of dysthymia: a systematic review. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:池田扶実子/古川壽亮)