過多月経(多量月経出血)のための子宮鏡下手術前に投与する術前に内膜を薄くする薬物

The use of preoperative endometrial thinning agents before hysteroscopic surgery for menorrhagia (heavy menstrual bleeding)

Sowter MC, Singla AA, Lethaby A

最終更新日:20/02/1998


目的:子宮内の手術環境を良くし,手術後の治療結果を向上させるため,過多月経に対する子宮鏡下手術の前に内膜を薄くするのに用いられるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)類似薬,ダナゾール,プロゲステロンの有用性について研究すること.

検索方法:これらのある薬剤と他の薬剤,プラセボや術前治療なしと比較したランダム化試験を同定するために,コクラン月経異常疾患と生殖能力低下グループの調査方法(レビューグループの詳細を見よ)を用いた.

選択基準:これらのある薬剤と他の薬剤,プラセボや術前治療なしとの有用性を,術中,術後の治療結果において比較した試験が組み込まれた.ランダム化試験のみがこのレビューに組み込まれた.

データ収集と解析:8個の研究がこのレビューの組み込み基準に適合した.ゴセレリン (GnRH類似薬の一つ)と無治療またはプラセボと比較した研究が4つあった.3研究はゴセレリンとダナゾールを比較したものであった.1研究は黄体ホルモンとダナゾール,トリプトレリン(GnRH類似薬の1つ)と無治療を比較したものであった.データは2人のレビュアーによって別々に抽出された.3番目のレビュアーはデータ抽出の精度をチェックし,欠落したデータや不明瞭なデータの部分を2人のレビュアーに書き出した.術中のパラメーターは内膜の肥厚,手術時間,手術の容易さ,子宮内腔の環流液の吸収率と合併症率であった.比較された術後の結果は,無月経婦人の割合,術後の月経量や月経困難症,その後の手術の必要性であった.副作用のデータもまた記録された.

主な結果:無治療と比較した場合,GnRH類似薬は手術時間の短縮,手術の容易さ,術後無月経率の上昇と関連していた.術後の月経困難症もまた減少したようである.GnRH類似薬の使用は術中の合併症率に影響を及ぼさず,この手術に対する患者の満足度は術前に内膜を薄くする薬物の使用と無関係である.GnRH類似薬はダナゾールと比べて全過程で内膜萎縮をおこす.他の術中,術後の結果については,差はほとんどない.詳細に報告した研究はほとんどないが,GnRH類似薬もダナゾールも有意に多い率で婦人に副作用を引き起こす.内膜を薄くする薬物としての黄体ホルモンを評価するに有用なランダム化したデータはほとんどなく,より長期の結果については,どの内膜を薄くする薬物の効果も明らかでない.

結論:月経過多のための子宮鏡下手術の前に内膜を薄くすることは術者の手術状態や短期の術後の結果を向上させる.ゴナドトロピン放出ホルモン類似薬はダナゾールに比べて全過程において内膜萎縮を少しだが,よりおこすが,どちらの薬物も満足した結果が得られる.長期の術後の結果に対するこれらの薬物の効果とさらなる手術治療の必要性についてはこのレビューに含まれる研究では考慮されていない.


Citation: Sowter MC, Singla AA, Lethaby A. The use of preoperative endometrial thinning agents before hysteroscopic surgery for menorrhagia (heavy menstrual bleeding). In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:矢野利枝/佐藤孝道)