微量アルブミン尿のある糖尿病患者の正常血圧に対してアンジオテンシン変換酵素阻害剤が有益であると言うレビュウの抽出.

Are angiotensin converting enzyme inhibitors useful for normotensive diabetic patients with microalbuminuria?

Lovell HG

最終更新日:25/09/1997


目的:アンギオテンシン変換酵素阻害剤の使用が降圧作用以外の機序で初期糖尿病性腎症の終末期腎不全への進行を遅らせるかどうか,微量アルブミン尿のある正常血圧糖尿病者の治療において価値があるかどうかを評価すること.

検索方法:英語によるレビュー,ランダム化比較試験をMEDLINEで検索した.私的な参考文献リストと抽出された研究の参考文献リストも用いられた.

選択基準:アンギオテンシン変換酵素阻害剤を少なくとも1年間投与され,コントロール群と比較された開始時に正常血圧である糖尿病者に対する結果であることがそれぞれ確証できるランダム化比較試験.

データ収集と解析:さまざまな包含・除外基準をもった11編のランダム化比較試験の結果に対しメタ・アナリシスが行われた.

主な結果:11のうち10の研究でアンギオテンシン変換酵素阻害剤群の患者においてアルブミン排出率が低下した.プラセボ群では11のうち2つの研究のみで低下した.

IDDMとNIDDMの両者で治療はアルブミン排出率の有意な低下を来たした.コントロールと比較してカプトプリル,エナラプリル,リシノプリルのいずれの治療もアルブミン排出率を低下させた.

プラセボ群に比してアンギオテンシン変換酵素阻害剤群の開始時正常血圧の患者に血圧のより大きな低下が見られた.治療群の集積された治療後平均血圧は未治療群に対して有意に低かったが,個々の研究の全てではなかった.収縮期と拡張期における明らかな(治療−プラセボ)効果はより長期の研究でより大きな標準誤差があった.

治療群において平均ヘモグロビンが少し低下し,コントロール群で上昇したが,このことと糸球体濾過率の変化における差は統計学的に有意ではなかった.

結論:アンギオテンシン変換酵素阻害剤は微量アルブミン尿のある正常血圧糖尿病者のアルブミン排泄率(の上昇)を阻止もしくは減じることができ,同様に血圧上昇を減らしたり防ぐことが出来る.アンギオテンシン変換酵素阻害剤群患者に降圧がなされた場合,アルブミン排出率の低下が独立した腎作用によると確信することは出来ない.

終末期腎不全の遅延との直接の関連はまだ示されていない.

実質的な副作用は存在しないように思われる.


Citation: Lovell HG. Are angiotensin converting enzyme inhibitors useful for normotensive diabetic patients with microalbuminuria?. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:直江正保/安田 裕)