重症精神病に対する危機介入

Crisis intervention for severe mental illnesses

Joy CB, Adams CE, Rice K

最終更新日:26/08/1998


目的:急性のエピソードを持つ重症精神病患者に対する危機介入モデルの効果を‘標準的ケア‘と比較してレビューすること.

検索方法:関連したランダム化比較試験はBiological Abstracts, CINAHL, コクラン・ライブラリ, コクラン精神分裂病グループの比較臨床試験特別レジスター, EMBASE, MEDLINE, PsycLIT, sociofile,ISI database (科学引用文献や社会科学引用文献)を調査することによって同定された.さらに関連文献が出版された臨床試験やそれらの著者から集められた.

選択基準:(どのように診断されたかは別にして)重症精神病患者に対する(どのように定義されたかは別にして)危機介入モデルと標準的ケアとのすべてのランダム化比較試験.

データ収集と解析:レビュアーはデータを独立して評価し,intention-to-treatに基づいて分析した.レビュアーは早期に研究から脱落したり,追跡期間中に脱落した人を改善しなかったものと仮定した.可能でしかも適切な場合には,オッズ比(OR)とその95%信頼区間(CI)が計算された.治療効果発現必要症例数(NNT)が推定された.連続デ―タについては加重平均差が計算された.データは不均質性がないかどうか調べられた.

主な結果:5つの研究のうち,どれも純粋なかたちでの「危機介入」を調査していなかった.それらはすべて危機介入の要素を含む急性期の患者に対する在宅ケアの一種を用いていた.


そのエトスにかかわらず,在宅ケアグループの45%は治療期間中,入院が避けられなかった.しかし在宅ケアは再入院を避けることにおいてはわずかに優れていた(OR 0.63 CI0.42 -0.94).しかしこの結果は有意な不均質性のために断定的なものではない.

他の結果では,在宅ケアの方が6ヵ月と12ヵ月における追跡調査からの脱落を減少させ(それぞれOR 0.62,CI 0.42 -0.91,NNT 12,CI 6-53; OR 0.65,CI 0.44-0.96,NNT 13,CI 7-130) ,家族の負担を減少させ(OR 0.20,CI 0.10-0.42,NNT 3,CI 1-5),そして患者と家族の両者にとって,より満足できるケアの形態であることを示唆している.脱落,死亡,精神状態における相違は認められなかった.すべての研究は在宅ケアの方が病院でのケアよりコストがかからないことを示していたが,すべてのデータは歪曲されていたか,利用不可能なものかのどちらかであった.スタッフの満足度,介護者の投入,薬物のコンプライアンス,再発数についてのデータはなかった.

結論:このレビューは在宅ケア危機介入が,現在おこなわれている在宅ケアパッケージと組み合わさって,重症の精神病患者を治療するのに実行可能で,受容できる方法であることを示唆している.臨床的により有用なパッケージの方がすでに危機介入より断然勝っているかもしれない.しかし危機介入の方針をもし実行するつもりならば,単純でよくデザインされた臨床試験以外にこれを正当化することは困難であろう.スタッフの満足度や燃え尽きのような問題も重要となるだろう.


Citation: Joy CB, Adams CE, Rice K. Crisis intervention for severe mental illnesses. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:矢野利枝/堀 士郎)