目的:ベーチット症候群の臨床症状各々を治療するにおいて,利用できる薬物療法の有効性を評価する.検索方法:1996年1月から1998年1月までのMEDLINEデータベースを検索した.480の参考文献が得られた.妥当と思われる32の参考文献を選択した.
選択基準:以下の4つの判定基準をすべて満たしている場合,その研究は適当であるとした.1.単または双盲法のランダム化比較試験である,2.参加者は1990年にInternational Study Groupで定められたベーチット症候群の患者である,3.どんな薬物療法の介入研究であっても,プラセボまたはベーチット症候群治療のためのその他の薬物処置と比較されている,4.アウトカム評価には,眼の炎症進行度,関節炎,粘膜皮膚症状(口内炎,陰部潰瘍,結節性紅班),検査値変化,有害作用や死といった重大事項が含まれている.
データ収集と解析:32の妥当と思われる参考文献は,包含基準に従って二人の別々のレビュアー(MA,AS)によって評価された.10の試験が包含基準を満たし,このレビューに引用された.引き続きMA,ASらが観察者となり,10の試験からは別々にデータが引き出され,クロスチェックされた.評価が2つに分かれたため,それぞれの試験の治療効果は一定の効果を算出できるモデル[ピートモデル(Petitti 1994)]を用いて判断された.重要視した平均差は,できるだけ試験終了時の結果を用いた.評価はRevman3.01を用いて算出された.分析は異なった介入ごとに別々に行われた.各々の試験のデータは蓄積されていないので質の指標によって感受性の解析を行ったり,投与量によってサブグループ解析を行ったりはできなかった.各試験間の比較の欠如と試験数の少ないことのために不均一性試験を行ったり,Funnelプロットを作成することはできなかった.
主な結果:ベーチット症候群の伝統的な治療の中でいくつかのものは,効力が欠如しているという結果がでた.それには,眼病併発患者へのコルヒチンやシクロホスファミドやステロイド投与,関節炎の患者へのアザプロパゾンやコルヒチン投与,アフタの患者へのアシクロビルやコルヒチン,インターフェロンの局所投与も含まれる.眼病併発患者へのシクロスポリンあるいはアザチオプリンや,関節炎の患者へのベンザチンペニシリンには保護的効果が確証できた.
結論:結果をより一般化し比較できるものにするために,シクロスポリンやアザチオプリン,ベンザチンペニシリンとプラセボとを比較したランダム化,プラセボ対照,双盲試験をさらに行うべきであるという結論を得た.
Citation: Saenz A, Ausejo M, Shea B, Wells G, Welch V, Tugwell P. Vasculitis: Pharmacological Therapy for Behcet's Syndrome. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.
(日本語翻訳:矢野 礼/糸矢宏志,野澤崇志)