早期産児における予防的合成サーファクタント投与

Prophylactic synthetic surfactant in preterm infants

Soll RF

最終更新日:26/01/1998


目的:呼吸促迫症候群(RDS)になる危険のある早期産児に合成サーファクタントを予防的に投与した効果を評価すること.

検索方法:周産期試験のオックスフォード・データベース,MEDLINE(MeSH語; pulmonary surfactant; 制限; age groupをnewborn infants; publication typeをclinical trial),参考文献を含んだ以前のレビュー,要約,学会の抄録,専門家の情報,手作業で検索した英文の雑誌を調査した.

選択基準:呼吸促迫症候群や未熟性によるその他の合併症を防ぐために,出生時または出生後早期にハイリスクの早期産児に,予防的に合成サーファクタントを投与することの効果を比較したランダム化比較試験.

データ収集と解析:気胸,肺間質性気腫,動脈管開存,壊死性腸炎,脳室内出血(すべての段階や,重症の脳室内出血),気管支肺異形性,死亡,気管支肺異形性または死亡,未熟児網膜症(すべての段階の網膜症とstage3-4の網膜症),1才時の死亡,または脳性麻痺の罹患率を含む臨床的結果についてのデータが,レビュアーによって臨床試験の報告から抜粋された.データはコクラン新生児レビューグループの基準に従って解析された.

主な結果:合成サーファクタントの予防的投与の研究で,予防的に合成サーファクタントを投与された新生児での呼吸状態の変動した向上と呼吸促迫症候群の減少を認める.メタ・アナリシスでは,気胸のリスクの減少(典型的相対危険度 0.67, 95%CI 0.50, 0.90; 典型的危険度差 -0.05, 95%CI -0.09, -0.02),肺間質性気腫のリスクの減少(典型的相対危険度 0.68, 95%CI 0.50, 0.93; 典型的危険度差 -0.06, 95%CI -0.11, -0.01),そして新生児死亡のリスクの減少(典型的相対危険度 0.70, 95%CI 0.58, 0.85; 典型的危険度差 -0.07, 95%CI -0.11, -0.03)が認められた.脳室内出血,壊死性腸炎,気管支肺異形性,未熟児網膜症と脳性麻痺のリスクに差はみられなかった.メタ・アナリシスでは,予防的合成サーファクタント投与に関連した動脈管開存のリスクの増加(典型的相対危険度 1.11, 95%CI 1.00, 1.22; 典型的危険度差 0.05, 95%CI 0.00, 0.10)と,肺出血のリスクの増加(典型的相対危険度 3.28, 95%CI 1.50, 7.16; 典型的危険度差 0.03, 95%CI 0.01, 0.05)が認められた.

結論:呼吸促迫症候群になる危険があると判断された新生児に,合成サーファクタントを予防的に気管内投与すると臨床的結果が向上することが示された.合成サーファクタントを予防的に投与された新生児で,気胸の危険の低下,肺間質性気腫の低下,新生児死亡の低下がみられた.合成サーファクタントを予防的に投与された新生児で,動脈管開存や肺出血になる危険が増加した.


Citation: Soll RF. Prophylactic synthetic surfactant in preterm infants. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:谷本省三/佐藤孝道)