D-ペニシラミンによる未熟児の網膜症の予防

D-Penicillamine to prevent retinopathy of prematurity

Phelps DL, Lakatos L, Watts JL

最終更新日:12/02/1998


目的:以下の質問に答えること:超低出生体重児に対してのd-ペニシラミンの予防的投与の効果は,急性未熟児網膜症(ROP)や重症ROPの頻度,死亡を含む副作用に関してどうであるか?

検索方法:様々な電子データベース,参照文献を含む今までのレビュー,抄録,学会の議事録,専門家の情報を調査した.

選択基準:出生翌日までに体重が2,000g未満の新生児にd-ペニシラミンを投与した,ランダム化または準ランダム化比較試験をこのレビューに適切と考えた.症例を追加して,可能性のある副作用について調べた.

データ収集と解析:臨床的な結果のデータは3人のレビュアーによって別々に抜粋され,意見を一致させた.新生児コクランレビューグループの基準に従って,データの解析を行った.

主な結果:ROPの有効性についての2つのランダム化試験が同定された.両者を組み合わせると相対危険度 0.09, 95%CI[0.70,1.39]で,治療をした新生児で急性ROPの発病率は有意に低かった.重症のROPについては解析できなかった.相対危険度 0.99 95%CI[0.70,1.39]で死亡率には影響がなかった.副作用の報告はなかった.コントロール群で再入院が多かったが,1年間の経過観察で,痙攣や発達遅滞に有意差はみられなかった.高ビリルビン血症に対して140人以上の新生児にd-ペニシラミンが使われた他の報告があるが,皮膚発赤が2新生児に報告され,1新生児に関連あると思われる嘔吐がみられた.

結論:d-ペニシラミンは生存率に影響を及ぼさないようだが,生存新生児の急性ROPの発病率を低下させるようである.研究データから,より広い集団でのこの薬物のさらなる研究が正当化される.起こりうる副作用に対する念入りな注意が必要である.


Citation: Phelps DL, Lakatos L, Watts JL. D-Penicillamine to prevent retinopathy of prematurity. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:高口恵子/佐藤孝道)