未熟児の非栄養学的な吸啜

Non-nutritive sucking in premature infants

Pinelli J, Symington A

最終更新日:17/08/1998


目的:未熟児の非栄養学的な吸啜(NNS)が,a)体重増加,b)エネルギー摂取,c)心拍数,d)酸素飽和度,e)病院滞在期間の長さ,f)腸管内の通過時間,g)完全な経口食になる年齢,h)そのほかの臨床的に関連のあるアウトカムに影響があるかどうかを調べる.

検索方法:1976年以降のMEDLINEとCINAHLデータベース,コクラン比較臨床試験レジスターを検索した.関連のある記事やレビューの参考文献リストも検索した.関連記事の広範囲にわたるリストをこの分野での一流の研究者二人に送った.この分野に関連のある研究のうち発表されたものあるいは未発表のものでオリジナルのリストの中に含まれていないものを知っているかどうかを彼らに尋ねた.

選択基準:未熟児の非栄養学的な吸啜と非栄養学的な吸啜を行わなかったものとを比較した実験的あるいは準実験的デザインのすべての試験.臨床的に関連のあるアウトカムを調べた.報告は英語あるいは翻訳者のいる言語で行われた.

コンピューターによる検索は二人のレビュアーによって行われた.レビュアーによって確認された関連のあるタイトルや要約は可能性のあるもの全てが抜粋された.検索された全ての記事は前もって決められた基準に従ってそれぞれのレビュアーによって別々に関連性が評価された.それぞれの記事の参考文献をさらに関連のあるタイトルについてそれぞれまとめて検索し,関連性を評価した.全ての関連性の基準を満たした記事は前もって決められた基準により方法論的な質の高さを評価された.二人のレビュアーによって適当な質を持っていると判断された記事はこの解析に入れられた.

データ収集と解析:データはそれぞれ別々に二人の著者によって抜粋された.関連したアウトカムに関する研究の数が少ないためサブグループ解析は行われなかった.

主な結果:このレビューは19の研究から成り,そのうち13はランダム化比較試験であった.NNSでは未熟児の病院滞在期間の有意な短縮が見られた.他の主要な臨床的な変数(体重増加,エネルギー摂取,心拍数,酸素飽和度,腸管内の通過時間,完全な経口食になる年齢)に関してはNNSの一貫した利点をこのレビューでは示せなかった.

このレビューでは,NNSによる他のポジティブな臨床的なアウトカムが認められた.チューブからボトル食への移行と挙動とである.ネガティブなアウトカムはどの研究においても報告されなかった.

結論:このレビューではNNSの介入を受けた未熟児の病院滞在期間の有意な短縮が見られた.他の主要な臨床的な変数(体重増加,エネルギー摂取,心拍数,酸素飽和度,腸管内の通過時間,完全な経口食になる年齢)に関してはNNSの一貫した利点をこのレビューでは示せなかった.

このレビューでは,NNSによる他のポジティブな臨床的なアウトカムが認められた.チューブからボトル食への移行と挙動とである.ネガティブなアウトカムはどの研究においても報告されなかった.研究のデザインやアウトカムの変わりやすさ,長期にわたるデータの不足などに関して現在手に入るエビデンスにいくつかの制限がある.手に入るエビデンスに基づいて考えると,未熟児のNNSはいくつかの臨床的な利点があるように思われる.短期間でのネガティブな効果は無いように思われる.

長期にわたるデータが無い点を考慮して更なる調査が勧められる.これらのデータのメタ・アナリシスを容易にするため,この分野でのこれからの研究はこれまでの研究に用いられたものと同じアウトカムの測定を含めるべきである.さらに,発表される報告は全ての関連のあるデータを含めるべきである.


Citation: Pinelli J, Symington A. Non-nutritive sucking in premature infants. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:野崎香織/糸矢宏志)