高血圧性の障害とそれに随伴する症状の予防を目的とした妊娠中のカルシウム補給

Calcium supplementation during pregnancy to prevent hypertensive disorders and related adverse outcomes

Atallah AN, Hofmeyr GJ, Duley L

最終更新日:10/04/1998


目的:妊娠中の高血圧性の障害のリスクと母体/胎児/新生児/幼児に関係のある有害なアウトカムにおける妊娠中のカルシウム補充効果の判定.

検索方法:このレビューは,コクラン妊娠と出産グループ全体が開発した検索方法を利用した.付加的な方法については,レビューの原文中に記載されている.

選択基準:妊娠中,カルシウム補給(最低一日1g)とプラセボのランダム割付け試験:許容範囲内での割付け情報の非公開;妊娠中の高血圧性の障害のリスクが低いもしくは高い妊婦の研究;臨床に関連するアウトカムが報告された.

データ収集と解析:確認されたすべての試験について,方法の質とその他の選択基準は二人のレビュアーにによって独立に評価されてから,レビューの中に含まれる試験は選ばれた.見解の相違については討議により一致を見た.「分析の概要」において,明記された数値的なデータは,二人のレビュアーにより独立に抽出されクロスチェックが行われた.

主な結果:高血圧+/-蛋白尿:全体に,高血圧のリスクにおいて,中等度の減少であった.(相対危険度(RR) 0.82,95%信頼区間(CI) 0.75-0.91)効果は高血圧のリスクが高い女性(RR 0.35 95%CI 0.21-0.57)と食事でのカルシウム摂取量が少ない女性(RR 0.53 95%CI 0.41-0.69)において最大であった.

子癇前症:この結果は妊娠性高血圧の結果に類似している(RR 0.74 95%CI 0.62-0.89).全体として子癇前症のリスクは減少した.そして,高血圧のリスクが高い女性(RR 0.22 95%CI 0.11-0.43)とカルシウム摂取量が少ない女性(RR 0.34 95%CI0.22-0.53)においてこの効果は大きく現れた.

早産:早産のリスクに対する全体的影響はなかった.高血圧のリスクが高い女性においてはリスクは減少したが(RR 0.42,95%CI 0.23-0.78),他のサブグループに効果はなかった.

死産あるいは退院前の死亡:効果有無に関する証拠はない.

結論:これらのデータは,妊娠性高血圧のリスクが高い女性や,食事でのカルシウム摂取量が少ないコミュニテイの女性へのカルシウム補給を支持している.この試験で使われたカルシウムより低用量のカルシウムの効果が同様かどうか,このレビューからは決定できなかった.

将来は,妊娠中のカルシウム補充の理想的な量に焦点を当てた研究を行うべきだ.さらなるランダム化試験は妊娠高血圧のリスクが高い女性や,食事によるカルシウムの摂取量が低いコミュニテイに集中的に着目し,子供の長期経過観察も含むべきである.


Citation: Atallah AN, Hofmeyr GJ, Duley L. Calcium supplementation during pregnancy to prevent hypertensive disorders and related adverse outcomes. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:亀井陽子/岡田慶子、岡田 隆)