急性脊髄損傷の薬物治療

Pharmacologic treatment of acute spinal cord injury

Bracken MB

最終更新日:01/12/1997


目的:急性脊髄損傷の薬物治療について行われたランダム化試験のレビューを行うこと.

検索方法:このレビューはコクラン外傷グループによって作られた調査方法により行われた.加えて国際急性脊髄損傷研究の資料が評価された.

選択基準:さまざまな言語を含んだランダム化比較試験で,治療への割付けがランダムに行われている,既発表あるいは未発表のもの.

データ収集と解析:このレビューにおける試験は,試験を繰り返し行うことができなかったりアウトカムが異なっていたりするために,概してメタ・アナリシスできない.

主な結果:この分野の医学的ケアには不安なことにほとんど試験がない.たった1つの治療が大規模に研究されてきた.それはメチルプレドニゾロン酢酸ナトリウム塩である.これは損傷から8時間以内に15分以上かけて30mg/kgで静脈注射し,23時間5.4mg/kgで持続注入を行うレジメンを行ったならば神経学的な改善が示されるというものである.さらに最近の研究ではメチルプレドニゾロン治療が損傷後3時間以内に開始できなければ(すなわち3ー8時間後に開始すれば)その後メチルプレドニゾロンを24時間(つまり合計48時間)投与すれば有意に運動神経機能や機能的状況を改善することを示している.

結論:高用量のメチルプレドニゾロンステロイド療法は第3相ランダム化比較試験で有効性を示す唯一の薬物治療である.最初の研究は繰り返し行われた.高用量のメチルプレドニゾロンは多くの信頼性のある教科書や多くの国々での標準的な治療として受け入れられている.最近の研究では当初の研究を立証したり治療開始が遅れた時に維持療法を延ばすことによる付加的有効性を示している.急性脊髄損傷に対する薬物治療のランダム化試験がもっと多く早急に必要である.


Citation: Bracken MB. Pharmacologic treatment of acute spinal cord injury. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:田中恵美子/後藤忠雄,大野茂樹)