慢性前立腺炎治療のためのアロプリノール

Allopurinol for the treatment of chronic prostatitis

McNaughton Collins M, Wilt T

最終更新日:27/05/1998


目的:慢性前立腺炎の治療におけるアロプリノールの有効性と安全性を決定する.

検索方法:コクラン共同レビューグループの検索方法を用いて,慢性前立腺炎に対するアロプリノールによる治療のランダム化比較試験を調べた.コクラン前立腺疾患グループのデータベース,Cochrane Field for Complementary Medicineのデータベース,1966年から1998年のMEDLINE,得られた論文の著書目録および著者に直接連絡をとることで,論文として発表された試験や,未発表の試験を,調べた.

選択基準:慢性前立腺炎の患者を治療するための,アロプリノール対プラシーボのランダム化比較試験のすべてを含む.急性の前立腺炎,細菌性の前立腺炎および無症候性の前立腺炎は除外した.主なアウトカムは患者が訴えた不快感の変化であった.

データ収集と解析:基準を満たした試験がただ一つあった.除外されるものはなかった.レビュアーたちは,各自が独立して,患者が訴えた不快の変化,研究者によってグレード化された前立腺の痛み,白血球数および生化学的指標に関するデータを抽出した.

主な結果: 240日の治療と 330日の継続管理の後,患者が訴えた不快については治療群とコントロール群の間に統計的に有意な変化があった.45日から 225日の間では,平均のスコアは,コントロール群の男性7人については 0.47(標準偏差 0.21)であるのに対し,アロプリノール群の男性7人については 0.95(標準偏差 0.19)であった.加重平均の差は 0.48(95%CI -0.690,-0.270)であり,治療効果を示していた.45日から 135日の間では,平均のスコアは,コントロール群の男性14人については 0.21(標準偏差 0.97)であるのに対し,アロプリノール群の男性25人については 0.08(標準偏差 1.29 )であった.加重平均の差は 0.87(95%CI -1.587,-0.153)であり,治療効果を示していた.アロプリノール群では,調査者による前立腺の痛みの採点は有意に少なく,血清尿酸値,尿中尿酸値,前立腺の分泌物中の尿酸やキサンチンの値は低かった.白血球数については2つのグループ間に有意差はなかった.アロプリノールを投与された患者に大きな副作用はなかった.プラシーボ群の3人の患者は副作用のために脱落した.

結論:慢性前立腺炎のアロプリノール治療に関する1つの小さな試験は,患者が訴えた症状の改善,研究者によってグレード化された前立腺の痛み,および生化学的なパラメータについて改善があった事を示していた.しかしながら,論文中のデータ,測定法,統計解析では,尿中の変化や,前立腺の分泌物中のプリン塩基やピリミジン塩基の変化が症状の改善をもたらしたということを納得させるものではない.いくつかのアウトカムについて統計的に有意な結果があったが,臨床的な関連性は明らかではない.慢性前立腺炎の治療に,アロプリノールを日常的に処方することは尚早である.アロプリノールが有効であるかどうかを決定するためには,標準化された,確かなアウトカムと解析を用いたアロプリノール治療に関するさらなる研究が必要である.


Citation: McNaughton Collins M, Wilt T. Allopurinol for the treatment of chronic prostatitis. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:六車浩史/宮本英樹)