卵巣癌再発におけるタモキシフェン

Tamoxifen in relapsed ovarian cancer

Williams CJ

最終更新日:19/08/1998


目的:このレビューは伝統的細胞毒性のある化学療法がうまくいかなかった卵巣癌女性患者へのタモキシフェンの臨床的有効性のエビデンスについて検討した.

検索方法:コクラン婦人科系癌グループの検索方法,ゼネカ(当該製薬会社)とこの領域の試験の著者から提供された引用文,それに加えもれた試験がないかを確認していただいた C Trope教授への個人的接触.

選択基準:これまでに細胞毒性のある化学療法で治療された卵巣癌患者への,ランダム化あるいは非ランダム化の,タモキシフェンについての第二相試験.もし可能であれば,第三相試験も調べた.

データ収集と解析:試験はCJWにより研究に加えるか検討された.ランダム化比較試験(RCTs)がある場合は,2人の独立したレビュアーがデータを拾い上げ,話し合いにより,そのデータが包含されるべきかの一致を得た.非ランダム化試験に小さなデータがある場合は,CJW単独で抜きだした.

主な結果:難治性あるいは再発卵巣癌患者への,タモキシフェン単独療法と最善の支持療法とを比較したランダム化比較試験がないということが,今回の文献のレビューで明らかになった.客観的改善率を報告した一連の第2相試験があり,いくつかは安定率について報告している.568患者のうち59人(10.4%)が客観的に改善に至り,356人の患者のうち109人(30.6%)が安定していた(変化観察期間;4週間以上).ある一部の試験だけが安定率を報告しているに過ぎないが,安定したものの率が高いことを望んでいるバイアスがかけられた集団なのかもしれない.治療の効果の持続期間あるいは全生存者についての解析可能なデータはなかった.症状の緩和や生活の質に関して,タモキシフェンの緩和作用について示された有効なデータはなかった.

結論:タモキシフェンは細胞毒性のある化学療法に抵抗性の卵巣癌に対してある程度の効果を示した.つまり全ての試験(患者数568人)での全体的な客観的改善率は約10%であった.しかしながら,各々別の試験において客観的改善率には大きな幅(0%〜56%)があった.一部は,個々の試験において患者の選択の包含基準が異なったり,効果の測定方法やこれらの方法の適用方法が異なったりすることを反映しているのかもしれない.疾患の安定率について報告している試験もあるが,その情報は特定の選択された研究で報告されているだけなのでこれらのデータにはバイアスがあるかもしれない.治療の効果持続期間や生存についての解析可能な有用なデータはなかった.さらに,実質的に,このような状態に対してのタモキシフェンの緩和作用についてのデータもまたなかった.ホルモン受容体のデータを集めた研究で,受容体の存在とタモキシフェンへの反応の増加とは関係がないことが示された.

これらのデータに基づき,化学療法に反応しなかった卵巣癌のある程度の患者にタモキシフェンが反応する可能性があることを示唆するいくらかの証拠がある.しかしながら,再発性の卵巣癌へのタモキシフェンの役割を評価する新しい世代の試験が必要である.それらの試験は調整されるべきで(最善の支持的ケア,あるいは他の薬物療法に反して)使用された治療の軽減された利益を測定する.もしもこの世代の試験が,進行した疾病におけるタモキシフェンの有用な作用を示す積極的な証拠をもたらせば,化学療法の補助薬として投与されるタモキシフェンのさらなる試験をする十分な理由となる.


Citation: Williams CJ. Tamoxifen in relapsed ovarian cancer. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:八森 淳/白石由里)