慢性疲労症候群の成人に対する認知行動療法

Cognitive behaviour therapy for adults with chronic fatigue syndrome

Price JR, Couper J

最終更新日:24/08/1998


目的:1.慢性疲労症候群(CFS)の成人に対する認知行動療法(CBT)のランダム化比較試験のすべてを系統的にレビューすること.2. CFSの成人において,CBTが伝統的な医学的治療や他の介入法と比較して,より有効であるという仮説を検定すること.

検索方法:1.参考文献のデータベースの調査.これは,MEDLINE,PsycLIT,Biological Abstracts,EMBASE,SIGLE,Index to Theses,Index to Scientific and Technical Proceedings,およびScience Citation Indexを含んでおり,高度に感度のある調査を実行するために複数の検索用語を使用した.2.抑うつ・不安・神経症グループの臨床試験データベースの電子検索.3.関連のある研究やレビューの引用リストから他の関連のある臨床試験を検索した.4.関連のある研究の主な著者およびその分野での研究者と連絡をとった.

選択基準:CFSの成人の患者が,CBTまたは伝統的な医学的治療や他の介入といったコントロールの介入を受けており,かつそのアウトカムが適切な方法で評価を受けている,すべてのランダム化比較試験を包含した.CBTは,Aタイプ(休息と活動を”正常な”レベルまでもどすことを励ます)かBタイプ(休息と活動を疾患によって許されたレベルの範囲内で励ます)に分けた.

データ収集と解析:二人のレビュアーが,終始,独立して,臨床試験の選択やデータの抽出を行い,食い違いがあったときのみ結果を比較した.関連のある臨床試験は3つのカテゴリーの中の1つに割り当てられた.品質が高度または中等度の研究に対して,標準化されたデータ抽出シートを用いた完全なデータ抽出が行われた.品質の低い試験はレビューから除かれた.レビューの仮説を分析するために行われた比較は,CBTのAタイプと他の介入法,CBTのBタイプと他の介入法であった.機能的なアウトカムが比較の上での主要なアウトカムとして使用されたが,可能な場合は他の適当なアウトカムが比較された.結果は,Review Manager softwareを用いて総合された.二値データについては,それぞれの研究についてオッズ比が計算された.連続データについては,effect sizeを算出し,標準化平均差とその95%信頼区間が計算された.

主な結果:十分な品質の臨床試験は3つしか見つからなかった.これらの試験は,CBTが伝統的な医学的治療や休息と比べた場合,CFSの成人の外来患者の身体の機能に有意に利益をもたらすことを証明した.治療終了の約6カ月後において,十分でない身体機能上のアウトカムを1例防ぐために2例の患者を治療しなくてはならない.これらの臨床試験においては,CBTが患者に対して非常に受け入れやすいものであるようであった.プライマリケアで見られるような軽症のCFSの患者や機能障害のために外来患者として医者にかかることができない患者に対しては,CBTの有効性に関して満足のいくエビデンスはない.また,集団CBTの有効性に関して満足のいくエビデンスはない.

結論:認知行動療法は,慢性疲労症候群の成人の外来患者に対しては有効でかつ受け入れやすい治療であるように思われる.CFSは,ありふれた,かつ高度の機能障害をもたらす障害である.この治療法が永続的な機能上の利益をもたらしうる可能性をもつことを医学会が認識し,健康サービスの管理者がこの治療法をもっと受けやすくする価値がある.

さらなる研究がこの重要な分野において必要である.臨床試験はその報告の仕方や方法論で現在の標準に従うべきである.外来診療所で通常みられる患者よりも重症の,また軽症の障害を持った患者に対するCBTの有効性が評価される必要がある.集団CBTおよび入院患者へのCBTと伝統的な治療を比較した試験,および段階付けされた活動のみとCBTを比較した臨床試験も行われる必要がある.


Citation: Price JR, Couper J. Cognitive behaviour therapy for adults with chronic fatigue syndrome. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:六車浩史/古川壽亮)