重度月経出血減少における周期的黄体ホルモン療法の有効性

Effectiveness of cyclical progestagen therapy in reducing heavy menstrual bleeding

Lethaby A, Irvine G, Cameron I

最終更新日:20/08/1998


目的:このレビューの主な目的は,月経の黄体期間中もしくは21日間以上の経口黄体ホルモン治療が,出産可能年齢の重度月経出血(HMB)患者における月経失血量を減少させることにおいて有効であるかを調査する事である.

検索方法:コクラン月経異常疾患と生殖能力低下グループの比較臨床試験特別レジスター,MEDLINE,EMBASE,PsychLIT,, Current Contents,Biological Abstracts,Social Sciences Index,CINAHLのランダム化比較試験を電子的に検索した.レビュー文献に引用されている試験も同定した.ほとんどのケースにおいて,個々の試験の第1著者と接触した.

選択基準:病原性,医源性でなく,全ての出産可能年齢の女性の他覚的,自覚的な定常的な重度月経出血に対して,経口黄体ホルモンとプラセボか又は他の治療とを比較したランダム化比較試験.

データ収集と解析:完全に選択基準を満たす7つのランダム化比較試験(RCTs)が同定された.レビュアーは独立してデータを抽出し,二値のアウトカムに対してはオッズ比を,継続的なアウトカムに対しては加重平均差を,データから算出した.

主な結果:黄体ホルモン療法とプラセボを比較しているRCTsは同定されなかった.経口黄体ホルモンと他の治療法の比較は月経周期の黄体期間中の投与あるいは月経周期5から26日目の21日間投与と投薬法を分離して評価した.

黄体期間の黄体ホルモン療法は,トラネキサム酸,ダナゾールおよび子宮内プロゲステロン放出システムと比較した際,月経失血を減らす上では,有意に効果的ではなかった.非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)を好んで使用する傾向も非常に有意なものではなかった.月経期間は,経口黄体ホルモン療法と比べるとプロゲステロンIUS使用時に有意に延長するが,ダナゾール治療と比べると有意に短縮した.治療群間のコンプライアンスと受容性には差が無かった.黄体ホルモン療法と比較した場合,ダナゾール投与下で有害事象は有意に多くみられた.黄体ホルモン療法とトラネキサム酸療法間にクオリティ・オブ・ライフの有意な違いはみられなかったが,全ての3つのカテゴリーにおいてトラネキサム酸を支持する有意な傾向はみられなかった.

月経周期5日目から26日目の黄体ホルモン療法は,子宮内黄体ホルモン放出システム(LNG IUS)と比べて,月経失血の減少は有意に効果的ではなかったが,両群ともベースラインと比べて有意に減少した.月経期間の正常な月経周期になった(すなわち<80mls/周期).オッズは,また,それほど,LNG IUS治療患者に比べてノルエチステロン(NET)( 5日目から26日目)によって治療された患者で有意に多くはなかった.NET(治療)患者が治療が受け入れがたいとする比率は,LNG IUSより有意に高かった.しかし,乳房の圧痛や月経間出血などの有害事象は,IUS治療を受けている患者でより多かった.

結論:排卵周期を持つ女性において,月経周期 15日目または19日目から26日目まで黄体ホルモンを投与する事が,ダナゾール,トラネキサム酸,NSAIDs,子宮内黄体ホルモン放出システムなどの他の治療と比べて月経過多の治療として有利な点を見出す事は出来なかった.

月経周期の21日間の黄体ホルモン療法は有意に月経失血量を減少させるが,患者は子宮内レボノルゲストレルより治療を容認できない.黄体ホルモンのこのレジメンは月経過多の短期治療において役割を果たすかもしれない.


Citation: Lethaby A, Irvine G, Cameron I. Effectiveness of cyclical progestagen therapy in reducing heavy menstrual bleeding. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:日野村 靖/大野茂樹)