静脈性下肢潰瘍に対する,弾性包帯とストッキングの比較

Compression bandages and stockings in the treatment of venous leg ulcers

Cullum N, Fletcher AW, Nelson EA, Sheldon TA

最終更新日:27/05/1998


目的:レビューの目的は,静脈性下肢潰瘍の治療における,弾性包帯とストッキングによる圧迫の,相対的有効性と対費用効果を評価することであった.潰瘍の治癒を主要なアウトカムとした.

検索方法:コクラン創傷レビューグループの検索方法を用いた.未発表の研究について弾性包帯とストッキングの製造業者に連絡をとった.さらに,発表,未発表,及び進行中の研究の同定を補助するために諮問委員が集められた.

選択基準:ランダム化比較試験で,発表,未発表を問わず,年代あるいは言語に制限はない,包帯あるいはストッキングによる圧迫療法を評価したもので,静脈性下肢潰瘍の治癒をもってエンドポイントとしたもの.動物実験は除外した.

データ収集と解析:調査員から報告された結果は,1人のレビュアーにより,使用可能な十分な研究か否か詳しく調べられた.

適格な研究の詳細は,データ抽出用シートを使って抽出され,要約された.批判的吟味に必要な情報を完全なものにするために著者と連絡をとり,報告書に欠けているデータを得る試みが為された.抽出されたデータは二人の調査員により独立して検証され,異なったところは議論された.非常に類似した介入方法やアウトカムの研究の結果は,メタ・アナリシスされた.

主な結果:27の比較をした21のランダム化比較試験がレビューに含まれた;比較された療法は,圧迫vs圧迫無し(6研究);弾性,多層,強圧迫vs非弾性,多層,通常圧迫(3研究);弾性,多層,強圧迫vs非弾性,通常圧迫(3研究);多層,強圧迫vs単層のもの(4研究);多層かどうかで比較したもの(4研究);ストッキングと包帯の圧迫を比較したもの(2研究).

圧迫の有る無しで比較した6研究のうち,4研究で圧迫したほうが明らかに治癒率が良い.

弾性,多層,強圧迫と多層,非弾性包帯で比較した3つの研究では,弾性,多層,強圧迫の包帯の方がより効果があることが示された.

3つの研究で,4層の圧迫包帯と,その他の強圧迫,多層包帯で比較したが治癒率に違いは見られなかった.

3つの研究で,4層の包帯と非弾性の短伸縮包帯,またはアンナブーツを比較したが違いは見られなかった.

多層,強圧迫包帯は1層の粘着性絆創膏より明らかに効果があるとしている1つの大規模研究がある;その後の3つの研究では違いが見られなかったが,これらの研究はみな小規模のものであった.これらの試験では多層,強圧迫が単層より効果的であることが示された.

ストッキングによる圧迫を評価したものは2つの研究だけである.1つめは高圧迫ストッキングに血栓用ストッキングを組み合わせたものが,短伸縮性包帯より効果的であるとしていた.2つめは小規模の研究であり,弾性ストッキングとアンナブーツでは違いがないとしていた.

これらは経済的な評価はされていないため,個々の療法についての相対的対費用効果についての結論はだせない.

結論:非圧迫と比べて圧迫することにより潰瘍の治癒率は改善される.強く圧迫した方が弱い圧迫よりより効果がある.ただし明らかな動脈性疾患がある場合は使用すべきではない.強く圧迫する方法の違い,たとえば,多層のもの,短伸縮性包帯,アンナブーツなど,による効果に明らかな差はない.特に決まった圧迫方法というものは確立されてはいない.圧迫療法を広めるための最適な戦略を決める手助けとなる,経済的評価を組み込んだ,良くデザインされたランダム化比較試験が必要である.


Citation: Cullum N, Fletcher AW, Nelson EA, Sheldon TA. Compression bandages and stockings in the treatment of venous leg ulcers. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:溝渕泰三/大野茂樹)