感冒に対するビタミンC

Vitamin C for the common cold

Douglas RM, Chalker EB, Treacy B

最終更新日:28/11/1997


目的:冬の季節の間毎日(予防法として)か,もしくはかぜ症状が発現したその時(治療法として)経口的にビタミンCを摂取することは,かぜ症状の発現率を低下させると共に(もしくは)かぜ症状を改善するかどうかを明らかにする.

検索方法:レビューの最初の段階は 1989年Kleijnenと1992年Hemilaの2つのオ―バービューの中に取り入れられた発表された研究のみを扱った.これらの著者はそれぞれのレビューに違った試験を取り入れており,有益な影響度について微妙に違った結論に達した.このコクランのオーバービューのより新たな版では KleijnenとHemilaが選択に値しないと考えられたものも含めて,全ての入手可能な研究についての評価が提供されるであろう.これら2つのオーバービューの出版以降のコクラン・ライブラリーとMEDLINEの検索では,この2人の著者によって配慮されなかった感冒の試験は認められなかった.

選択基準:KleijnenとHemilaによる2つのオーバービューに含まれた30の試験すべてがこのレビューのなかに含まれている.

データ収集と解析:19の別々に発表された論文をふくむ30の試験がそれぞれ,独立した2人のオブザーバーによってその質が評価された.予防と治療の両方を目的としたビタミンCの維持量の効果を試す試験と,感冒の症状が出た時の治療の効果だけを評価する試験と,両者の試験について別々にアウトカムが設定された.経口ビタミンCの用量が1グラム以上か以下なのかによっても解析時,別々に考慮した.レビューは発表された論文のみを元にし,研究目的の感冒症状の発症率,罹病期間,重症度については発表された文献から得られたデータを収集し,また副作用の情報についても検討した.

主な結果:30の試験から得たエビデンスからは,ビタミンCを毎日1グラムの用量で予防的に冬の間摂取した場合の感冒の罹患率について,有益な効果は示せなかった. 予防的維持容量の試験と治療容量の試験の両方において,感冒症状の罹患期間については一貫した効果があったが,概ねその効果は少しであった. 試験を通じた罹病期間に対する治療効果は,罹病期間減少が-0.07%から39%と非常に幅のあるものであった. データを引き出すことのできる 予防,治療両方のすべての研究を通して,その違いは,感冒の一つのエピソードについて0.5日以下の有症状期間(これは有症状期間の約8%に相当する) の減少であった.これらの研究から得られたエビデンスは,異なる治療法やビタミンCの用量によってもはっきりとした関連性のある有益性は示さなかった.しかし,感冒症状が現れた後から投与するビタミンCの治療効果のみを調べた試験では,低用量より,高用量(負荷投与量8グラム)の方がより大きな効果を現すことができるというエビデンスが示された.観察された集団としての治療効果は,Paulingが主張した効果より少ないようである.だからといって,感冒に罹患する集団による世界的な影響や,ビタミンCが全身症状に対して特別な影響があり,発病しやすい特定の人々には効果があるかもしれないというような示唆的なエビデンスから考えると,集団としての治療効果を取るに足りないことと却下することはできない.

結論:これらの試験から得られたエビデンスからは,感冒予防のための長期間連日高用量のビタミンC投与は支持できなかった.比較的高用量のビタミンCを摂取することにより,感冒症状の持続期間に対する少ないが比較的一貫性のある治療効果が得られるようである.この有効性は,予防法として毎日高容量(1グラム以上)を試した場合と,症状が出現した後で負荷投与量の効果を試す場合の両方で現れた.用量と治療効果との関連については更なる調査が必要である.


Citation: Douglas RM, Chalker EB, Treacy B. Vitamin C for the common cold. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:福田泰代/八森 淳,橋本 淳)