コレラの予防:ワクチン

Cholera prevention: vaccines

Graves P, Deeks J, Demicheli V, Pratt M, Jefferson T

最終更新日:11/05/1998


目的:コレラの発症と死亡の予防に関するコレラワクチンの有効性を評価する.コレラワクチン接種に関連した副作用の頻度を推定する.

検索方法:コクラン感染症グループの広範囲な検索を行う方法を使用して,MEDLINEとEMBASEの電子的検索を行い,検索された論文の引用文献を読んだ.さらに,学術誌Vaccineを第1号から1996年の終わりまでハンドサーチした.製造業者,その分野で活動的な研究者,そのレビューで評価した研究の筆頭あるいは相当する著者に手紙を出した.

選択基準:プラセボ,対照ワクチン,あるいは無処置,また,コレラワクチンのタイプ,用量,あるいはスケジュールにより,コレラワクチン(死あるいは生)を比較した人におけるいくつかのランダム化あるいは準ランダム化研究を含めた.免疫状態あるいは特殊な危険性の高いカテゴリーに関係なく,成人あるいは子供を含めた.アウトカムとして考慮したものは,コレラ患者,死亡,非コレラ性の下痢患者,副作用である.

データ収集と解析:32の試験が組込み基準を満たした.これらのうち,17はコレラ患者の記載があり,19は有害な結果について記載されていた.参加者の数,コレラ患者,死亡,有害事象が研究のレポートから抽出された.ワクチン接種に引き続いて多様な間隔で起こる結果が,異なる年齢グループ,ワクチンのタイプによって解析された.相対危険のサマリーは,ワクチンの効力と有害な効果を推定するために使用された.試験間での有意な不均一性が認められる場合はランダム効果モデルを用い,その他の場合は固定効果モデルを用いた.

主な結果:3タイプのコレラワクチンが使用されていた.注射と経口の死細胞(KWC)ワクチンが,特定の地域において効力試験で調べられていた.生の組み換え型ワクチンは現在,効力が試験されている.効力試験の参加者の数は,幼児と子供を含み260万人以上である.有害な効果を評価する試験は,両タイプのKWCワクチンと生ワクチンについて行われている.安全性試験の参加者は,11,459人を数えた.

レビューの結果は,コレラKWCワクチンが最初の7ヶ月間(有効性57%,95%CI 50-64%)と最初の1年間(有効性51%,95%CI 41-59%)相対的に有効であることを示した.有効性の推定では,追加投与をしなくても2年間(有効性47%,95%CI 36-56%)低下しない.注射と経口投与の両方とも相対的に有効である.しかし経口KWCワクチンでは有意な予防効果は3年目に延長した.

年齢群(5歳以下あるいは以上)により層別化された有効性の推定は,最初の1年間ではワクチンが5歳以下の子供においても5歳以上と同程度有効であるということを示した.2年目では,ワクチンは5歳以上よりも5歳以下の子供において有効がより少ない.3年目では,ワクチンは5歳以下の子供において効果がないが,5歳以上ではまだ強い予防効果があった(有効性57%,95%CI 38-71%).この差は注射と経口KWCワクチンの両者にあてはまる.4,5年経過すると,どちらの年齢群も予防効果がなかった.

非経口的KWCワクチンの短期と追加免疫スケジュールの両者は,被接種者に2年間同等の予防効果を誘導するようである.3,4年目では,追加免疫スケジュールによる優位な予防効果は明らかである.

非経口KWCワクチンは,被接種者の13%に倦怠感,嘔吐,全身性の影響に有意の増加や,被接種者の40%にまで多くの局所性の副作用を起こした.経口KWCワクチンはプラセボと比較して,全身あるいは局所性の症状を有意に増加させることはなかった.経口生ワクチンは,アクティブプラセボに比べて全身あるいは局所性の有害な影響を高めることなく,よい耐性を示すようである.

結論:コレラKWCワクチンは7ヶ月47%,1年51%,2年目47%と効力が推定され,安全かつ相対的に有効であると結論する.非経口的に投与されたKWCワクチンは,1回の注射あるいは2回の短期スケジュールの投与後,このレベルを達成する.このレベルの予防的効力を4年まで伸ばすには,年一回の追加投与を必要とする.経口KWCワクチンは,3年目にもいくらかの予防効果(31%)を与えるようである.どちらのワクチンタイプついても,追跡一年目では年齢群よるワクチン効力に差はないが,5歳以下の子供は1年まで予防効果があっただけであった.一方,5歳以上の子供と大人は,3年まで予防効果があった.

注射KWCワクチンは,被接種者の少数に全身と局所性の副作用の増加を起こした.一方,経口KWCワクチンは起こさなかった.経口組み換え生ワクチンは安全にみえるが,ランダム化比較試験からの効力についてのデータはまだ利用できない.

コレラ非経口KWCワクチンの短期(3-6ヶ月)の予防効果は不完全であるため,特定の地域の居住者または旅行者に現在のところ勧められない.このアドバイスは,利用できるエビデンスを総合的にみて再考するべきであろう.


Citation: Graves P, Deeks J, Demicheli V, Pratt M, Jefferson T. Cholera prevention: vaccines. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:安西邦男/橋本 淳)