精神分裂病に対するQuetiapine

Quetiapine for schizophrenia

Srisurapanont M, Disayavanish C, Taimkaew K

最終更新日:27/05/1998


目的:精神分裂病に対するQuetiapineの有効性と有害作用を,プラセボ,古典的および非典型的な抗精神病薬と比較して判定する.

検索方法:Biological Abstruct, CINAHL,コクラン・ライブラリー,コクラン精神分裂病グループの比較臨床試験特別レジスター, EMBASE, MEDLINE, PsycLIT, SocioFile,多くのカンファレンス予稿集を電子検索し,特定の雑誌をハンドサーチした.未発表の研究についての情報をゼネカ社に求めた.

選択基準:精神分裂病あるいは類似の疾患に罹患した成人をQuetiapine,プラセボ,または他のメジャートランキライザーによる治療にランダムに割付け,臨床上関連のあるアウトカムが報告された全ての比較試験.

データ収集と解析:引用文献,可能であればAbstractについてもレビュアーが独立して調べ,論文を注文して再度調べ,質の評価を行った.データもまた独立して抽出した.均質な二値データについてintention to treat 解析によって,MHオッズ比(OR),95%信頼区間(CI),そして適切な場合は治療効果発現必要症例数(NNT)を計算した.

主な結果:7件の短期の試験がレビューに包含され(31件の報告),7件が除外された(15件の報告).「試験から早期に脱落した者の数」以外の他のデータは全てバイアスがかかっている可能性があり,全ての試験において脱落率が高いために(48-61%)注意して見なければならない.

早期脱落に関してはQuetiapineがプラセボより優れていることを示唆するデータがいくつかある.早期に脱落した多くの者についていろいろな仮定を設けてデータを分析すると,総合的現症と陽性も陰性も含めた精神病症状がquetiapineによって改善するかもしれないことが示唆される.これらのデータの一部は統計学的有意性に達するが,その臨床的意義は解釈が難しい.錐体外路系の副作用の頻度はquetiapineとプラセボとで違わないが,ふらつきや口渇といった副作用はquetiapineを投与された群で多い.口渇と眠気が多いことを除いては,quetiapineは古典的な抗精神病剤と余り違わない.早期脱落に関しては高用量のquetiapineのほうが低用量のquetiapineより優れている.一部のデータはまた高用量が総合的現症をわずかに改善する点で優れていることを示唆している(n=1, OR 0.70, CI 0.50-0.99, NNT 11).錐体外路症状については高用量群と低用量群とで明確な差はない.

結論:試験の終了時点でデータの半分が得られないため,早期脱落以外の結果を解釈する際に大きな問題となる.Quetiapineの使用を勧める前に,ケア従事者と臨床医にとって重要な短期,中期,長期のアウトカムを設けた,大規模で適切に施行された試験がもっと必要である.


Citation: Srisurapanont M, Disayavanish C, Taimkaew K. Quetiapine for schizophrenia. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:秋山香乃/古川壽亮)