精神分裂病における新「非定型」抗精神病剤対クロザピン 

Newer 'atypical' antipsychotic medication versus clozapine for schizophrenia

Tuunainen A, Gilbody S

最終更新日:26/08/1998


目的:精神分裂病にとってクロザピンの効果を新「非定型」抗精神病薬と比較して評価すること.

検索方法:すべての言語における論文を以下のデータベースから検索した.Biological Abstracts,コクラン精神分裂病グループの臨床試験データベース,コクラン・ライブラリーCENTRALデータベース,EMBASE,MEDLINE,LILACS,PsycLIT.包含された論文の引用文献のスクリーニングを行った.最近の臨床試験の著者と,最近の試験著者,そしてクロザピン, iloperidone, olanzapine, quetiapine, レモキシプリド, リスペリドン, セルチンドール, ziprasidone, ゾテピンの製造者と連絡をとった.

選択基準:クロザピンと新「非定型」抗精神病薬を比較したすべてのランダム化比較試験は2人のレビュアーによる独立の評定によって包含された.

データ収集と解析:データは2人のレビュアーによって独立して抽出された.追加データと欠損データについて臨床試験の著者や製薬会社の製造者と連絡をとった.均質な二値データについてはオッズ比とその95%信頼区間をPeto法で算出した.不均質な二値データについてはランダム効果モデルを使用した.可能な場合は,治療効果発現必要症例数(NNT)とその95%信頼区間を求めた.連続データについては重みづけ平均差と標準化平均差を計算した.包含された研究の数が少ないので,今回のレビューでは感度分析や漏斗図分析は行わなかった.

主な結果:今回のレビューは,4研究(18ペーパー)を含む.うち3研究は4から6週間の持続で,1研究のみ18週間のものであった.3つの研究は評価待ちとされ,1つの現在進行中の研究はレビューの次のバージョンで含まれるだろう.

少数の研究や患者においては,新「非定型」抗精神病薬は,総合症状評価尺度においてクロザピンよりも劣っているという明らかな証拠はなかった.しかしクロザピンと比較した場合のこれらの薬剤の受容性を確かめることも出来なかった.

クロザピンと新「非定型」抗精神病薬は異なった副作用プロフィールを示した.クロザピンは流涎,易疲労性,嘔気,めまい,体重増加が多かったのに対し,「非定型」抗精神病薬は,錐体外路症状と流涎減少が多い傾向があった.包含された研究と症例数が少ないので,今回のレビューでは,個々の「非定型」抗精神病薬の効果は評価していない.

これらの薬剤とその副作用の,患者の日々の生活の質や社会機能に対する影響は測定されていない.驚くべきことに,医療サービスの利用,再燃,入院といった測定の容易なアウトカムが,記録されていない.これらの薬剤が日常診療に導入されたときにどのような経済的影響があるかについての情報を与えてくれるような費用データは提供されていない.

結論:この系統的レビューは,精神分裂病および近縁精神病の治療において,新「非定型」抗精神病薬がゴールドスタンダードであるクロザピンより明かに劣るものではないという事実に対して暫定的な支持を与える.

この結果の重要性を評価するためには,より長期にわたり,生活の質や経済的エンドポイントといった臨床的に重要なアウトカムを測定した臨床試験が必要である.

新「非定型」抗精神病薬とクロザピンとの効果および受容性の等価性はまだ証明されていないと結論できる.


Citation: Tuunainen A, Gilbody S. Newer 'atypical' antipsychotic medication versus clozapine for schizophrenia. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:矢野利枝 /古川壽亮)