頸部損傷の保存療法 パート2;理学療法

Conservative management of mechanical neck disorders. Part 2: physical medicine modalities

Gross AR, Aker PD, Goldsmith CH, Peloso P

最終更新日:18/01/1998


目的:

理学療法が成人の頚部損傷における痛みを減少させるかを決定すること.なんらかの条件が,治療の集積結果の重要性に影響を及ぼすかどうか決定すること.これらの条件には以下が含まれる:解析方法の質,罹患期間,頸部損傷の種類.

検索方法:

コンピュータ化された文献データベースを(Medlars,Embase,Chirolars,Index to Chiropractic Literature,Cumulative Index to Nursing and Allied Health Litarature,Science Citation Index,CPI,NTIS)を1985年以後(もしくは次の最も近い年)から1993年の12月まで調べ,すべての著者,関連した国内及び全世界の政府機関,財団,組織,専門家から情報を求め,全ての論文の書誌スクリーニングを行い、出版・公表されている研究とされていない研究を区別した.

選択基準:

2人の査定者(AG,PA)が独立して,以下の包含基準にしたがって,どの論文かわからないようにされた論文を評価した(デザイン=ランダム化比較試験(RCT)もしくは臨床比較試験(CCT);集団=頚部損傷を持つ18歳以上の人;介入=理学療法;アウトカム=痛みの測定か何か他の尺度).それぞれ選択された試験は,方法論的質に関し独立して評価された.

データ収集と解析:

2人の査定者(AG,PA)が独立して,痛みやその他のデータと同様に,特定の人口統計データとメタ・アナリシスの過程での様々な可能性のある情報源と関係したデータを抜粋した.データに基づいて中央値及び平均効果値が計算された.逆χ二乗検定法をp値を統合する目的で用いた.

主な結果:

頚部損傷の保存的療法のため,検索された25のRCTのうち13が理学療法を利用していた.これらの13のRCTのうちの11が実施方法の質においてやや効果的即ち優良と評価された.理学療法の使われている5つのRCTが逆χ二乗検定法により統合された:電磁療法の2つは,毎日(一日あたり8時間)の治療の3〜4週間の継続で痛みの有意な減少(p<0.01)をもたらした;そしてレーザー療法の3つについては,6から10回行ってもプラセボと比べて有意のある差はなかった(p=0.20).他の療法の有効性,無効性,または有害性について明確にするに足る科学的根拠に基づく文献は存在していない.これは,体操や牽引,針療法,温・冷療法,電気療法,頚部装具固定,慢性の疼痛や違和感に対する行動療法的リハビリテーションのような一般的に使用されている治療も含んでいる.

結論:

頚部外傷の様々な治療について臨床試験から得られる情報はほとんどない.一般的にすべての治療法について,効力や効果の詳細を評価する詳細な研究はなされていない.解析方法の質に限っても,疼痛減少という点でレーザー療法よりも電磁療法の効果を示唆する文献は散見される程度である.この総説は日常診療へのエビデンスに基づくアプローチのための基本を示すものである.とくに妥当性と信頼性のあるアウトカムの評価方法の使用により,より確固としたデザインと方法論が将来の研究では,行われるべきである.

**読者への注意点**

Back Review Group Editorial Boardはこの総説で存在する4つの方法論的論点を読者に警告すべきであろう.第一は,レーザー療法と電磁療法の介入のため急性,亜急性,慢性患者からのデータの集積を含んでいることである.Back Review Groupの編集者達は,急性,亜急性,慢性患者の研究からのデータは,これらの患者間での生理学上の差のために集積することができないと感じている.急性,亜急性,慢性患者に違いがあるかもしれないこと,そして他の臨床的状態に(腰の痛みのような)よって2つに分けることを支持するための十分なデータがあることを認識しているかもしれないということを,レビューチームは原則的に同意してはいるが,首の痛みに関し,これらの患者が本当に違いがあるということを支持するための説得力と十分な質のある証拠を見つけることはできないと感じている.従って,見解でのこの違いのために,集積及び分割分析両者の記述は,読者自身でこの治療の効果を決定できるように提供されている.

他の2つの論点は,1985年から1993年までの間だけのMedlineデータベースからの検索とP値の集積に含まれている.更なる論議がそのレビューのMETHODSの部分の最後に提供されている.


Citation: Gross AR, Aker PD, Goldsmith CH, Peloso P. Conservative management of mechanical neck disorders. Part 2: physical medicine modalities. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:久保理恵/ 岡田 隆)