第3三半期の頚管熟化と分娩誘発に対するミソプロストールの腟内投与

Misoprostol administered vaginally for cervical ripening and labour induction in the third trimester

Hofmeyr GJ

最終更新日:20/04/1998


目的:入手可能な最良の根拠に基づき,第3三半期の頚管熟化または分娩誘発に対するミソプロストールの腟内投与の効果を判定する.

検索方法:コクラン妊娠と出産グループにより維持・更新された臨床試験のレジスター.

選択基準:組込み基準は以下の通り:

1)第3三半期の頚管熟化または分娩誘発に対して,他の方法またはプラセボ/無治療群とミソプロストールの腟内投与を比較した臨床試験

2)治療群とコントロール群をランダムに割付けたもの

3)割付の適切な秘匿

4)割付違反が実質的に結果に影響していないもの

5)臨床的に意味のある結果が報告されているもの

6)ランダム化割付に従った分析のために利用できるデータであること

7)欠如したデータは実質的に結果に影響を及ぼさないこと

データ収集と解析:考慮した試験は,結果を考慮することなく方法論的な質と採用の適切さで評価された.採用された試験データは以下に挙げる方法で処理された.

Mulrow CD,Oxman AD (編) ,コクラン共同計画ハンドブック[1997年3月1日改訂].コクラン・ライブラリー[ディスクまたはCDR-OMのデータベース].コクラン共同計画発行.オックスフォード,Update Software社.1996年より3カ月毎に改訂.

主な結果:腟内ミソプロストールとプラセボ:

レビューのこの部分に該当する唯一の小規模な研究[Fletcher 1993]はミソプロストールの頚管熟化に対する明かな効果とオキシトシンの必要性の減少を示した(分析表を参照).症例数が少なすぎて産科管理と母体および新生児の合併症に対する影響を評価できなかった.

ミソプロストールとオキシトシン:

ミソプロストールはオキシトシンよりも分娩誘発にはより効果的であった(24時間以内に経膣分娩することに失敗する相対危険度(RR)0.48 95%信頼区間(CI) 0.35-0.66).しかし,子宮の過剰刺激は胎児心拍数の変化を伴わない場合(RR 2.96 95%CI 2.11-4.14)と伴う場合(RR 2.54 95%CI 1.12-5.77)の両者ともミソプロストールで多かった.帝王切開に関する個々の試験の結果は一定でなく,ミソプロストール投与のあとにかなり減少したものから有意差のないものまであった.周産期または母体の予後に関して有意差はなかった.

ミソプロストールとプロスタグランデイン:

24時間以内の経腟分娩の失敗は5試験中,4試験で減少した.(RR 0.70 95%CI 0.61-0.79).差を示すことことができなかった試験はミソプロストールを25μg未満で3時間毎に用いる試験[Wing 1997]1つだけだった.オキシトシンによる促進はミソプロストールを用いた場合に少なかった(RR 0.66 95%CI 0.59-0.75).

胎児心拍数変化のない子宮過剰刺激はミソプロストール群で多かった(RR 1.53 95%CI 1.17-1.99).胎児心拍数変化を伴う子宮過剰刺激もミソプロストール群で多かった(RR 1.59 95%CI 1.02-2.48).胎便による羊水混濁はミソプロストール群で多かった(RR 1.38 95%CI 1.06-1.79).

経腟的器械分娩と帝王切開の率は試験間で一致しなかった.全体としてミソプロストール群で器械分娩は減少した(RR 0.75 95%CI 0.58-0.97).周産期または母親の予後に関して有意差はなかった.

ミソプロストールの低用量と高用量の比較:

低用量投与法(ミソプロストール25μgの6時間毎対3時間毎,または3時間毎の投与法におけるミソプロストール25μgに対して50μg)は24時間以内の分娩により多く失敗することについての明らかな差は見られなかった(RR 1.08 95%CI 0.93-1.25).有意にオキシトシンの使用が増え(RR 1.32 95%CI 1.11-1.56).分娩の方法,羊水混濁や母体の副作用における相違はなかった.胎児心拍数変化を伴う子宮過剰刺激は少ない傾向にあった.そして5分間の低アプガースコアと新生児集中治療室へ入院はより少なかった.

結論:25μgの3時間毎またはそれ以上の量を用いれば,ミソプロストールは従来の頚管熟化や分娩誘発の方法に比べてより効果がある.このレビューで胎児心拍数変化を伴う子宮過剰刺激が増えることがみられたことは心配である.周産期予後の差はみられなかったが,稀な重篤な副作用の可能性を除外するほどこの研究は大規模ではない.

そのため,ミソプロストールは効果が高く,廉価で使いやすい分娩誘発剤としての可能性が示されているが,現段階ではルーチンで使用することは勧められない.多くの国でこれらの使用法は承認されてもいない.

ミソプロストールには,大きな,経済的そして臨床的有益性の可能性があるため,安全性を確立するための試験が早急に必要である.このレビューに基づき,将来,次のような試験を行うべきである:

1.ランダム化,二重盲検試験

2.腟内投与のミソプロストールで,25μgを越えずに4から6時間毎の投与(経口のミソプロストールは別にレビューされる)

3.標本数が十分多く,重篤な周産期罹病率/死亡率など重要で稀な合併症について適度の差が検出できること

4.結果の評価判定として羊水混濁を含むこと.


Citation: Hofmeyr GJ. Misoprostol administered vaginally for cervical ripening and labour induction in the third trimester. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:溝渕泰三/anonymous、岡田 隆)