重篤な患者の輸液蘇生法におけるクリスタロイドとコロイドの比較

Colloids compared to crystalloids in fluid resuscitation of critically ill patients

Schierhout G, Roberts I, Alderson P

最終更新日:26/05/1998


目的:重篤な患者の輸液蘇生法で,クリスタロイドに比しコロイドを用いた場合の,死亡率に対する効果を決定する.

検索方法:試験は,コクラン比較臨床試験レジスター,MEDLINE,EMBASE,BIOS Index to Scientific and Technical Proceedingのコンピュータ検索,29の国際的雑誌や,いくつかの国際的な輸液治療の学会議事録のハンドサーチ,試験や総説論文の文献リストのチェック,および,発表の有無にかかわらず,同定されたすべての試験の著者に接触し,今までに行われた他の試験について尋ねることによって確認された.

選択基準:クリスタロイドとコロイドを比較したすべての比較試験.これらの研究対象者は輸液による容量付加が必要であり,対象者は,ランダムか準ランダム割付けに基づいてどちらかの治療群に割りあてられた.クロスオーバー法による試験と,妊婦,新生児を対象とした試験は除外された.

データ収集と解析:私たちは,対象者のタイプ,使用されたコロイドとクリスタロイドの種類,追跡調査期間,追跡終了時点での死亡率,割付けの隠蔽の質についてのデータを集め,1995年Schultzによって提案された基準に従って評価した.高張性クリスタロイド中のコロイドと等張性クリスタロイドの比較といった"二重の介入"を伴う試験は別々に解析された.解析は,患者のタイプと割付けの隠蔽の質によって層別化された.死亡率似ついて相対危険と95%信頼区間が計算された.

主な結果:40の適格なランダム化比較試験のうち,29はコロイドとクリスタロイドを比較した交絡のない試験であった(n=1676).10の試験は高張性クリスタロイドと,等張性クリスタロイド中のコロイドの比較(n=1422),1つの試験は,等張性クリスタロイドと,高張性クリスタロイド中のコロイドの比較(n=38)であった.死亡に対するプールした相対危険は,クリスタロイドと比べたコロイド(相対危険度=1.19;95%CI 0.98-1.44)についても,あるいは等張性クリスタロイドと比べた高張性クリスタロイド中のコロイド(相対危険度=0.84 95%CI 0.70〜1.01)についても,蘇生効果はみられなかった.十分な割付けの隠蔽がなされている試験だけに限ると,どちらのメタ・アナリシスの結果も,要約した効果指標は,コロイドにおいて死亡率を増加させる方向にシフトした.異なった患者のタイプ間で効果が違うといった証拠はない.

結論:プールした相対危険にもとづくと,コロイドによる蘇生は,3.8%(95%CI 0.4%-7.9%)の死亡率のリスクの絶対的な増加,もしくは,蘇生を行った100人の患者について4例の,さらなる死亡発生と関連している.等張性生理食塩水と比べた,高張性生理食塩水中のコロイドによる,蘇生の死亡率に対する効果はまだ疑わしい.この系統的・レビューは,特定範囲のものを扱うランダム化比較試験の状況以外では,コロイドの継続使用を支持しない.


Citation: Schierhout G, Roberts I, Alderson P. Colloids compared to crystalloids in fluid resuscitation of critically ill patients. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:溝渕泰三/石川鎮清)