急性外傷性脳損傷における過換気療法

Hyperventilation therapy in acute traumatic brain injury

Schierhout G, Roberts I

最終更新日:14/07/1997


目的:頭部外傷後の死亡と神経学的能力障害に対する過換気の効果を定量的評価をすること.

検索方法:総括的にはコクラン外傷グループの検索方法が用いられた.同定されたすべての関連論文の文献リストがチェックされた.発表された論文に関しそれ以上の情報をたずねるため,そして研究者や他の研究者によって行われたかもしれない更なる試験を同定することを手助けしてもらうことを依頼するために手紙が論文の筆頭著者に送られた.

選択基準:すべての過換気の比較試験で,参加者は臨床的に定義された様々な重症度の急性外傷性脳損傷で,対象者はランダム化もしくは準ランダム化割付けにもとづいて治療と対照に割付けられたもの.言語の制限はなかった.

データ収集と解析:私たちは,参加者,介入の時期と期間,追跡期間,神経学的能力障害と死亡に関するデータを集めた.相対危険度と95%信頼区間(CI)は,intention to treat原則に基づいてそれぞれの試験において計算された.過換気の時期,程度,期間は試験間で異質性の潜在的な原因として先験的に同定された.

主な結果:113の参加者のある1つの試験が同定された.過換気単独では緩衝剤THAMを併用した場合と同じく,損傷1年後の死亡率に対して有益な効果がみられた.けれども,その効果範囲は不確実であった(それぞれ 相対危険度=0.73, 95%CI 0.36〜1.49 と 相対危険度0.89;95%CI 0.47〜1.72).この改善は神経学的な回復によって裏付けられているのではない.過換気単独では,死亡もしくは重篤な能力傷害に対する相対危険度は1.14(95%CI 0.82〜1.58)であった.過換気とTHAM併用群での死亡もしくは重篤な能力障害に対する相対危険度は0.87(95%CI 0.58〜1.28)であった.

結論:利用できるデータは,重篤な脳損傷において過換気にによって得られるであろう潜在的な利点か害かを評価するには不十分である.重篤な脳障害に次ぐ過換気療法の有効性を評価するために,ランダム化比較試験が必要である.


Citation: Schierhout G, Roberts I. Hyperventilation therapy in acute traumatic brain injury. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:池田扶実子/後藤忠雄,大野茂樹)