外傷直後の症状の治療や外傷後ストレス障害(PTSD)の予防のための短期間の心理学的介入(心理学的聞き取り"debriefing")

A systematic review of brief psychological interventions ("debriefing") for the treatment of immediate trauma related symptoms and the prevention of post traumatic stress disorder

Simon Wessely , Suzanna Rose, Jonathan Bisson

最終更新日:25/11/1997


目的:外傷後の心理的苦悩の管理や,外傷後ストレス障害の予防のための短期の心理学的聞き取り("debriefing")の効果を評価する.

検索方法:MEDLINE,EMBASE,PsycLit,PILOTS,Biosis, Pascal,Occ. Safety and Health,CDSR,コクランうつ病・不安・神経症グループの臨床試験データベース,Anxiety and Neurosisの電子的検索.Journal of Traumatic Stressはハンドサーチした.分野の指導的研究者と個人的に連絡.

選択基準:すべてのランダム化研究の包含基準は,最近(1ヶ月以内)に外傷的出来事に暴露された人間を対象とし,単一セッションのみからなり,介入が外傷的出来事を想起し追体験することにより,何らかの形での情緒的処理または気持ちの表出を促し,出来事への情緒的反応の正常化を伴うものとした.

データ収集と解析:6個の臨床試験が包含基準を満たしていた.一般的に研究の質は低かった.2個の試験のデータは統合することができなかった.

主な結果:1回のセッションのみで聞き取り("debriefing")をすることは,心理的苦悩を減少させず,外傷後ストレス反応の発症を予防することもなかった.介入群では,外傷後ストレス障害の危険が短期間(3-5ヶ月)の間増加したが有意なものではなかった(オッズ比1.5,95%信頼区間 0.7-3.1).1年後の時点では外傷後ストレス障害の危険の増加は有意であった(オッズ比2.9,95%信頼区間1.1-7.5)が,これはたったひとつの臨床試験に基づいたものである.

また,聞き取り("debriefing")が全般的な病的心理状態,抑うつ,不安を減少させるという証拠もなかった.

結論:外傷的出来事の後,外傷後ストレス障害を予防するために,心理学的聞き取り("debriefing")が有用な治療であるという証拠は現在ない.外傷的体験の被害者に強制的に聞き取りを行うことは中止しなくてはならない.


Citation: Simon Wessely , Suzanna Rose, Jonathan Bisson. A systematic review of brief psychological interventions ("debriefing") for the treatment of immediate trauma related symptoms and the prevention of post traumatic stress disorder. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:谷本省三/古川壽亮)