子宮類線維腫の子宮切除術及び筋腫切除術の術前GnRH療法

Pre-operative GnRH analogue therapy before hysterectomy or myomectomy for uterine fibroids

Lethaby A, Vollenhoven B, Sowter M

最終更新日:20/08/1998


目的:このレビューの目的は,子宮類線維腫の主な外科的処置である子宮切除術あるいは筋腫切除術にあたり,ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)類による術前療法の役割を評価することである.

検索方法:関連したランダム化比較試験についての電子的検索は,コクラン月経異常疾患および生殖能力低下グループ比較臨床試験特別レジスター,MEDLINE,EMBASE,PsychLIT,Current Contents,Bioligical Abstracts,Social Science Index及びCINAHLについて行った.さらに,レビュー記事の引用文献から試験を同定することも試みた.採用した試験については論文の筆頭著者に追加情報のために連絡をとった.

選択基準:選択基準は,子宮類線維腫の子宮切除術あるいは筋腫切除術にあたり,ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)類による治療を,プラセボ,無治療,あるいは他の治療法と,ランダム化比較しているものとした.

データ収集と解析:このレビューの選択基準を満たす19件のRCTが同定された.GnRH類療法を無治療と比較している12試験及びGnRH療法をプラセボと比較している5試験(2試験は評価待ち)のデータから,レビュアーたちはそれぞれデータを抽出し,二値アウトカムからオッズ比及び連続値アウトカムから加重平均差(WMD)を算出した.GnRH類療法をその他の治療法と比較したRCTは無かった.術前アウトカムの結果は両術式とも合わせたものだが,術中及び術後アウトカムの結果は,筋腫切除術と子宮切除術,別々に報告した.層別解析は,対照群の種類,無治療あるいはプラセボ,によって行ったが,アウトカムによってはさらに妊娠週数による子宮の大きさによって層別解析を行った.

主な結果:術前及び術後のヘモグロビン(Hb)及びヘマトクリット(HCT)は手術前のGnRH類療法によって有意に改善されており,子宮体積,妊娠子宮の大きさ,類線維腫体積ともすべて減少された.骨盤症状も減少したが,有害事象によってはGnRH類療法時の方が起こりやすかった.子宮切除術のほうがGnRH類療法による前処置によって,より容易になったと思われる.つまり,手術時間が短縮でき,多くの患者が経腹式より経膣式手術が可能となったのである.在院日数もまた減少した.失血量の減少及び縦切開の短縮は筋腫切除術と子宮切除術の両方で見られた.筋腫切除術患者のGnRH類前処置後の類線維腫の再発のリスクが増加するというエビデンスは不確かであり,術後の妊孕の変化を評価したデータは無かった.GnRH類療法に伴うコストの増加は評価しなかった.

結論:類線維腫の外科手術前3ヶ月あるいは4ヶ月間のGnRH類の使用は,子宮体積及び類線維腫の大きさの両方を減少させる.術前に鉄欠乏性貧血がある場合には補正に有益であり,術中失血量を減少させる.子宮の大きさが腹部正中切開がが予定される程である場合には,GnRH類を使用することで,多くの女性がこれを避けることが可能である.子宮切除をこうむる患者にとってはこうした薬剤の使用によって膣式手術がより容易になる.


Citation: Lethaby A, Vollenhoven B, Sowter M. Pre-operative GnRH analogue therapy before hysterectomy or myomectomy for uterine fibroids. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:廣瀬美智代/石川鎮清)