活動性クローン病の寛解導入のためのアザチオプリンまたは6-メルカプトプリン療法

Azathioprine Or 6-Mercaptopurine Therapy For Induction Of Remission In Active Crohn's Disease C

Sandborn W, Sutherland L, Pearson D, May G, Modigliani R, Prantera C

最終更新日:02/04/1998


目的:活動性クローン病の寛解導入におけるアザチオプリンと6-メルカプトプリンの有効性を決定する.

検索方法:研究論文は,MEDLINEデータベース(1966年から1997年12月)を用いて,主な胃腸関係学会の抄録,出版された記事,総説の参考文献から選ばれた.コクラン比較臨床試験レジスターおよびコクラン炎症性腸疾患グループの比較臨床試験特別レジスターからも検索された.

選択基準:成人患者において,アザチオプリン及び6-メルカプトプリン療法のプラセボとのランダム化比較試験が8つ選ばれた.そのうち5つは活動性の疾患を扱ったのもので,3つは多剤併用例であった.

データ収集と解析:データは「ITT解析」の原則に基づき,3人の独立した観察者によって選ばれた.各々の研究にはあらかじめ決められた基準に基づき,スコア化した質の評価が行われた.データは2X2の表にされ(「効果あり」対「効果なし」と,「代謝拮抗剤」対「プラセボ」),コクラン・マンテル・ヘンツェルによって記述されているオッズ比と95%信頼区間を用いて,それぞれの試験をまとめた統計値を算出した.(後検証におけるオッズ比)

主な結果:活動性クローン病においてアザチオプリンあるいは6-メルカプトプリン療法の反応オッズ比は,プラセボと比較して2.36であった(95%CI 1.57-3.53).これは,1人の患者で治療効果を認めるためには約5人の患者に治療を行うことが必要であることを示している.活動性クローン病に対し6-メルカプトプリンを用いた2つの試験を分析から除いた場合,そのオッズ比は2.04(95%CI 1.24-3.35)であった.17週間以上の治療では,オッズ比は2.51(95%CI 1.63-3.88)に増えた.ステロイド減量効果はオッズ比3.86(95%CI 2.14-6.96)であった.これは1人の患者でステロイドを減量するために約3人に治療をすることが必要であることに相当した.試験からの脱落が必要であった副反応は,主にアレルギー,白血球減少,膵炎,吐き気等であり,治療にしたがって増加し,オッズ比は3.01(95%CI 1.30-6.96)であった.アザチオプリンや6-メルカプトプリンで治療している患者において,1人の患者で有害反応を観察するのに必要な患者数は14だった.

        

結論:アザチオプリン及び6-メルカプトプリンは,クローン病の寛解導入に有効な治療法である.オッズ比は治療17週間以降に増加し,これはアザチオプリンもしくは6-メルカプトプリン療法の治療の最小期間があることを示唆している.副反応は、治療中の患者にはありふれたことであった.


Citation: Sandborn W, Sutherland L, Pearson D, May G, Modigliani R, Prantera C. Azathioprine Or 6-Mercaptopurine Therapy For Induction Of Remission In Active Crohn's Disease C. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:水谷武夫/今道英秋)