糖尿病性腎症におけるタンパク制限

Protein restriction in diabetic renal disease

Waugh N R, Robertson A M

最終更新日:26/08/1997


目的:タンパク制限により糖尿病性腎症の腎不全への進行を遅らせたり防ぐかどうかを調べた.

検索方法:コンピューター化したデータベースMEDLINE(1976-1996)とEMBASE(1974-1996)を,diabetes mellitus,diabetic nephropathy,dietary proteins,diet,protein restricted,uremia のキーワードを用いて,検索を行った.選ばれた一部の雑誌(Diabetic Medicine,Diabetologia,Diabetes Care,Kidney International,Nephrology Dialysis,Transplantation)の最近の号は,まだコンピューター化したデータベースにはなっていないので論文をハンドサーチした.論文の参考文献のリストもチェックした.

選択基準:このレビューは,ランダム化比較試験に限定されていない.少なくとも4ヶ月低タンパク食を摂ったインスリン依存性糖尿病の患者を含むすべての試験が検討された.なぜならGFR糸球体濾過率によって反映される進行度の直線的性質から,患者は比較前後において自分自身が対照となり得るからである.

データ収集と解析:データは,追跡期間の長さ,タンパク制限の程度,腎臓の機能,食事のコンプライアンスに関するものを抽出した.透析や移植の必要性といったアウトカムに対するタンパク制限の影響を調べた研究は見つからなかった.試験はクレアチニンクリアランスのような短期間の指標による有効性のみ報告している.

主な結果:全般に,タンパク制限食(0.3-0.8g/kg)によって,糖尿病性腎症の腎不全への進行は遅くなるように思われる.

結論:結果から,タンパク摂取制限は,腎不全への進行を遅らせるように思われたが,いくつかの疑問点は未回答のままである.まず,第一に,どの程度のタンパク制限を行うべきか.試験では,0.3gから0.8g/kgのタンパク摂取を目指した.第二には,日常のケアにおけるコンプライアンスに関してである −どの程度まで,患者に受け入れられるであろうか.第三に,長期間の結果に関してである− 現在の試験では,透析までの期間や,ESRFの防止といった結果よりも,クレアチニンクリアランスのような,代理の指標を用いていることである.すべての試験は,インスリン依存性糖尿病患者を対象に行われた.低タンパク摂取がインスリン非依存性糖尿病患者に影響する腎症への進行を遅らせるかどうかは,まだ確かめられてない.


Citation: Waugh N R, Robertson A M. Protein restriction in diabetic renal disease. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:野崎香織/浅井泰博,糸矢宏志)