目的:結核性心膜炎の患者を対象にして,(1)最も有効な抗結核薬の併用療法と至適投与期間を同定する.
(2)アウトカムの改善に副腎皮質ステロイドが有効かどうかを決定する.
(3)心膜切除の指標,タイミング,有効性を評価する.
検索方法:MEDLINE 1966-1998,コクラン比較臨床試験レジスター(March 1998), EMBASE(1988-1998),結核性心膜炎に関する論文の参考文献,結核性心膜疾患分野の専門家に連絡をとった.
選択基準:結核性心膜炎に対する治療の有効性を評価しているランダム化試験と偽ランダム化試験.
データ収集と解析:研究方法,参加者,介入,アウトカムに関するデータはそれぞれの研究について集められ,方法論的な質が評価された.有効性の推定はピートのオッズ比を用い95%信頼区間をもって明確なアウトカムについて評価された.
主な結果:3つの試験が組込み基準を満たした.次の点に関してはステロイドが有効な傾向にあった.a)心内膜液滲出に対する心タンポナーデの予防 (OR 0.44, 95%CI 0.19,1.03),b)心内膜液滲出 (OR 0.53 95%CI 0.23,1.24) と梗塞性心外膜炎(OR 0.76 95%CI 0.29,2.00)で起こる死亡率の低下.しかし,点推定による信頼区間は広く,効果がないことで一致している.さらに,心膜切除に対するプレドニゾロンの必要性については明らかに有利なパターンがない.そして,24ヶ月のフォローアップでは臨床症状の一致した有効性がない.
プレドニゾロンと対照的に,日常的な外科的ドレナージは心タンポナーデを予防するのに明らかに有効であった(OR 0.10 95%CI 0.03, 0.34) .ステロイドと同様に心膜切除の必要性を低下させる可能性も示された(OR 0.39 95%CI 0.08, 1.79).しかし,侵襲的な外科的手法は24ヶ月後の臨床症状の悪化に関係していた(OR 0.37 95%CI 0.13,1.00).心膜炎に起因する死亡率の増加(OR 1.30 95%CI 0.28, 5.98) とすべての死亡率の増加についてあいまいな効果がみられた (OR 0.96 95%CI 0.26, 3.51).
結核性心外膜炎に対して,至適な抗結核薬選択プログラムを評価したランダム化比較試験は見つからなかった.また結核性の狭窄を伴う患者に対して心膜切除の効果を調べたランダム化比較試験はなかった.
結論:結核性心外膜炎の患者においてプレドニゾロンは明らかに有効な効果がみられない.しかし,心内膜液滲出と梗塞性心外膜炎の患者においては心タンポナーデと死亡を予防するという有意でない傾向が観察された.結核性の心内膜液滲出において心膜穿刺を必要とする心タンポナーデの予防には入院時の完全な外科的ドレナージが有効であった.しかし,それは24ヶ月後の臨床症状の悪化と関連があり,死亡率については利点がなかった.HIV陽性または陰性の結核性心外膜炎について副腎皮質ステロイドの有効性を示す比較試験が必要である.
Citation: Mayosi BM, Volmink JA, Commerford PJ. Tuberculous pericarditis treatment. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.
(日本語翻訳:糸目千穂/濱崎圭三)