急性精神分裂病とその他の類似の重症精神障害の治療における酢酸ズクロペンチキソール

Zuclopenthixol acetate in the treatment of acute schizophrenia and similar serious mental illnesses

Fenton M, Coutinho E, Campbell C

最終更新日:27/08/1997


目的:重症精神障害の急性期治療における酢酸ズクロペンチキソールの有用性を他のメジャートランキライザーと比較して評価する.

検索方法:コクラン精神分裂病グループの臨床試験データベース,コクラン・ライブラリー,MEDLINE,学会抄録や臨床試験の引用文献リストの検索を行った.未発表データの公開を研究共同体やLundbeck株式会社の医学情報部に呼びかけた.関連した執筆者にも接触を図った.

選択基準:2人のレビュアーが互いに独立に引用または論文を評価し,重症精神障害者を対象として酢酸ズクロペンチキソールと他の薬剤と比較したすべてのランダム化比較試験を選択した.

データ収集と解析:2人のレビュアーが互いに独立にデータを抽出した.追加情報または欠損情報については著者と接触を図った.二値データについてはオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した.可能性ならばORをピートの方法を使用して合算しintention-to-treat分析を行った.連続的変数には平均差を使用した.

主な結果:合算されたデータでは,経過観察期間の終わりにおいて精神病症状の「大きな改善はない」という結果については差がなかった(OR 0.84 CI 0.34-2.05).鎮静はさまざまな評価手段で評価されていた.たった1つだけ酢酸ズクロペンチキソール使用者で,4時間後の時点でより早く強い鎮静作用がみられたことを示唆するデータを示す研究があった(OR 0.18 CI 0.04-0.93).酢酸ズクロペンチキソールグループではメジャートランキライザーの追加投与を減らすことはできなかった(OR 2.18 CI 0.64-7.42).投与総数のデータは入手できなかった.副作用の報告は不十分であったが,副作用のパターンと臨床試験から早期に脱落する要望のどちらにおいても酢酸ズクロペンチキソールと他の「標準的薬物」との一貫した相違点の証拠はなかった.病院とサービスに関する帰結,攻撃的事件の数,ケアに対する満足や経済的帰結はどの研究でも扱われていなかった.

結論:精神科救急において「標準的」治療よりも酢酸ズクロペンチキソールを用いるべきかいなかについての勧告は慎重に考慮されるべきである.ほとんどの試験で重大な方法論的欠陥があり,所見の報告も不十分であった.このレビューでは,攻撃的あるいは混乱した行動や急性精神病症状のコントロール,もしくは副作用防止に酢酸ズクロペンチキソールがより効果的であるとと示唆する所見を発見できなかった.鎮静に直接関係あるデータはなかったが,経口ハロペリドールより早く強い鎮静作用はあるかもしれない.救急精神医療における酢酸ズクロペンチキソールの使用に関連した主張を確認するには,よく施行されたランダム化比較試験が必要である.


Citation: Fenton M, Coutinho E, Campbell C. Zuclopenthixol acetate in the treatment of acute schizophrenia and similar serious mental illnesses. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:溝渕泰三/中野有美,古川壽亮)