精神分裂病に対する認知行動療法

Cognitive behaviour therapy for schizophrenia

Jones C, Cormac I, Mota J, Campbell C

最終更新日:26/08/1998


目的:標準的治療,特別な薬物療法,および無介入と比較した精神分裂病のための認知行動療法(CBT)の効果をレビューする;また,同時に標準的治療を受けている精神分裂病者でのCBTの効果を,付加的な介入のないものと,標準的治療,特別な薬物療法,付加的薬物介入と,標準的治療とともに他の付加的心理社会的介入と標準的治療とを比較した効果について調べるためである.

検索方法:Biological Abstracts, CINAHL,コクラン・ライブラリCENTRAL Register, コクラン精神分裂病グループの臨床試験データベース,EMBASE,MEDLINE,PsycLIT,SIGLEとSociofileの電子検索を行った.選択された論文のすべての引用文献は,更に関連のある臨床試験について調査された.

選択基準:精神分裂病,または精神分裂病疑い,または特定の診断を下されていない精神疾患の人々に対して,著者が設定した基準を満たした認知行動療法を行ったランダム化比較試験.死亡,精神現症,再燃,精神健康,治療の受容性といったアウトカムを検索した.

データ収集と解析:研究の選択と方法論的質の評価は信頼性があった.データは,独立した2人のレビュアーにより抽出された.二値データはintention-to-treat解析を行い,連続データは70%以上の完遂率のあるものを提示した.

主な結果:4つの小さな臨床試験が確認された.提示されたデータのすべては,標準的治療単独よりもCBTプラス標準的治療のほうが,再発率が減少した点で,有利であることを示唆していた(短期間の OR 0.31 CI 0.1-0.98;中期での OR 0.38 CI 0.17-0.83;長期の OR 0.46 CI 0.26-0.83 ,NNT 6 CI 3-30)これらの結果は,それぞれの臨床試験においても評価尺度を用いたデータによっても支持された.しかしながら,CBTは,標準的アプローチよりも人々を治療に引き止める効果はなく,そして,薬物のコンプライアンスにおけるCBTの効果に関連したデータはない.

ある臨床研究では,支持的精神療法に比較したときのCBTの効果についてのデータを提示していた.統計学的に有意な効果はいずれの群においても示されなかった.しかしすべてはこの臨床試験がCBTの効果を見つけだすには検出力不足であったかもしれないことを示唆していた.

結論:適切に施行され,適切に報告された現在進行中の臨床試験の結果が待ち望まれる.現時点では,CBTを受けたいという分裂病患者にとっては,この治療法を受けることは,再燃の可能性を実質的に減少させる.しかしながら,現在は,CBTはどちらかというと珍しい治療法で,しばしば高度な技術と経験をもった治療者によって施行されている.したがって,日常診療へのその応用は適切な治療者がいるかどうかで制限されるであろう.同様に,現在のデータでは,CBTが経験の少ない治療者によって施行されたときにどの程度有効であるかについてはほとんど分からない.


Citation: Jones C, Cormac I, Mota J, Campbell C. Cognitive behaviour therapy for schizophrenia. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:仲川三春/古川壽亮)