成人の尺骨骨幹部単独骨折の管理

Management of isolated diaphyseal fractures of the ulna in adults

Pearce PK , Der Tavetain A, Handoll HHG

最終更新日:24/03/1998


目的:成人の尺骨骨幹部単独骨折の様々な治療形態の有効性を評価する.

検索方法:筋骨格・外傷グループの一般的な検索方法により,適切なランダム化試験を確認した.MEDLINE(1976年から1997年7月),EMBASE(1981年から1997年7月)及びコクランの管理する比較試験をコンピューター検索した.

選択基準:成人の尺骨骨幹部単独骨折の保存的,外科的治療のランダム化,準ランダム化比較試験.近位尺骨骨折とモンテジア脱臼骨折を除く.

データ収集と解析:データは組込み基準を満たす2例の保存的治療の試験より抽出した.質の評価とデータの抽出は独立して行われた.両試験共に質は悪く,集められた106名のうち示された結果はわずか70名と規模も小さいため,量的な解析は最小限にとどまった.

主な結果:総計106名の患者が含まれた,質的に劣る小規模試験2件がレビューに用いられた.1件のランダム化試験において,前腕のみの組み立て式機能的装具と,上肢石膏ギブスの比較がなされた.骨折の接合に要した時間には統計学的有意差はなかった.患者の満足度と仕事への復帰については,装具グループの方が優れていた.他の準ランダム化試験では,弾性包帯Ace Wrap,前腕のみと上肢の石膏ギブスの比較がなされた.この試験では追跡数に大きなロスがあり,データの分析も試験的なものとなった.しかし,Ace Wrapには痛みがあるために他の方法への交換が必要となり,この介入法は重大な問題をもつ可能性が示唆された.

結論:成人の尺骨骨幹部単独骨折において,どの治療法が最も適切であるかを判断するためのランダム化試験からは,不十分なエビデンスしか得られていない.この傷害の頻度やアウトカム,様々な治療法に付随するコストを確証する必要がある.現在の形式の保存的治療法について,適切にデザインされたランダム化比較試験が勧められる.


Citation: Pearce PK , Der Tavetain A, Handoll HHG. Management of isolated diaphyseal fractures of the ulna in adults. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:秋山香乃/濱崎圭三)