天然抽出肺サーファクタントの予防的投与

Prophylactic administration of natural surfactant extract

Soll RF

最終更新日:27/08/1997


目的:呼吸窮迫症候群(RDS)を発症する危険のある早期産児への天然のサーファクタント抽出物の予防的気管内投与の効果を評価する.

検索方法:検索は以下のものが含まれる:Oxford Database of Perinatal Trials,MEDLINE(MeSH用語:pulmonary surfactant;limits:age groupsをnewborn infantsで制限した),孫引き文献を含む以前のレビュー,抄録集,学会とシンポジウムの予稿集,専門家の情報,主として英語の学術誌のハンドサーチ.

選択基準:予防的な天然サーファクタント投与(サーファクタントは,付加的リン脂質で修飾したまたは修飾しないヒトあるいはウシの原料から得られた.)の効果を比較したランダム化対象試験は,呼吸窮迫症候群,他の未熟児合併症,死亡を防ぐ目的でハイリスクな生後まもない早期産児に施行した.


データ収集と解析:気胸,間質性肺気腫,動脈管開存,壊死性腸炎,脳室内出血(各グレードと重症脳室内出血),気管支肺異形成,死亡,未熟児網膜症などの臨床結果と考えるデータは,判定者によって臨床試験のレポートから抜粋された.コクラン新生児レビューグループの基準に従ってデータを解析した.

主な結果:天然サーファクタント抽出物を投与した新生児の呼吸状態の改善と,呼吸窮迫症候群の発生率の減少が,全ての研究で認められた.メタ・アナリシスは,気胸の危険の減少(典型的な相対危険0.35,95%信頼区間0.26,0.49;典型的な危険差-0.15,95%信頼区間-0.20,-0.11),間質性肺気腫の危険の減少(典型的な相対危険0.46,95%信頼区間0.35,0.60;典型的な危険差-0.19,95%信頼区間-0.25,-0.13),新生児の死亡の危険の減少(典型的な相対危険0.60,95%信頼区間0.44,0.83;典型的な危険差-0.07,95%信頼区間-0.12,-0.03),気管支肺異形成あるいは死亡の危険の減少(典型的な相対危険0.84,95%信頼区間0.75,0.93;典型的な危険差-0.10,95%信頼区間-0.16,-0.04)を支持する.脳室内出血,動脈管開存,壊死性腸炎,未熟児網膜症の発生率の差異は,認められない.治療した新生児の長期追跡調査のデータがほとんどない.

結論:妊娠30週未満の挿管した乳児のような呼吸窮迫症候群を発症する危険があると判断された乳児に対する天然サーファクタントの予防的な気管内投与は,臨床結果を改善することを証明した.天然サーファクタント抽出物の予防的な気管内投与を受けた乳児は,気胸,間質性肺気腫,死亡,気管支肺異形成あるいは死亡の危険を減少する.


Citation: Soll RF. Prophylactic administration of natural surfactant extract. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:安西邦男/佐藤孝道)