未熟児における水分制限と,水分自由摂取の比較

Restricted vs liberal water intake in premature infants

Bell EF, Acarregui MJ

最終更新日:10/08/1998


目的:このレビューの目的は,新生児期以後の体重減少,未熟児における脱水症,動脈管開存,壊死性腸炎,気管支肺異形成,脳内出血,死亡の危険について,水分摂取の効果を検討することである.

検索方法:実験的プロトコールにより,異なる水分摂取レベルの未熟児のグループ間で対象のアウトカムを比較しているランダム化比較試験を検索した.そのような試験は,著者のうちの一人(Bell EF. 輸液療法. 新生児の効果的なケア. Sinclair JC,Bracken MB 編集. オックスフォード. オックスフォード大学出版, 1992: 59-72)による以前のレビュー,コクラン新生児レビューグループによって供給された試験リスト,著者らの個人ファイルから検索された.

選択基準:未熟児に様々な水分摂取量で検討しているランダム化比較試験のみを対象とした.レビューは,水分が主として経腸的に投与されているか,全部が非経口的に投与されている乳児を含む試験に限り,検討したアウトカムによらずすべて対象に含んだ.

データ収集と解析:試験は二人のレビュアーによって選択され,個々の試験の方法論上の質を評価した.データはレビュアーにより独立して抽出され,相違点は相互に検討した.データはウインドウズ版RevmMan3.1を用いテーブルに入力された.副作用の率は水分制限群,自由摂取群のそれぞれで二値データで計算され,相対危険が計算された.さらに,最大体重減少が記録され,重み付けされた平均リスク差が求められた.解析(相対危険,リスク差,加重平均差の計算)と異質性の検定はMetaView3.1で固定効果モデルで行った.サブグループ分析は行わなかった.

主な結果:4つの試験が一緒に解析され,水分摂取制限が有意に新生児期以後の体重減少を増加させ,動脈管開存,壊死性腸炎,死亡の危険も減少させた.水分摂取制限は,脱水と気管肺異形成の危険を増加させる傾向にあったが,この傾向は統計学的には有意ではなかった.

結論:この解析に基づけば未熟児に対する最も慎重な水分摂取の処方は,慎重な水分制限であるように思われるが,重大な脱水を引き起こすことのないよう生理的な水分の必要量が満たされるべきである.このような実践により,副作用を有意に増加させることなく,動脈管開存,壊死性腸炎の危険を減少させ,おそらくは死亡全体の危険も減少させることが期待される.


Citation: Bell EF, Acarregui MJ. Restricted vs liberal water intake in premature infants. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:名郷直樹/鶴岡優子)