妊娠中の無症候性細菌尿に対する抗生物質治療と無治療の比較

Antibiotics vs no treatment for asymptomatic bacteriuria in pregnancy

Smaill F

最終更新日:10/10/1996


目的:妊娠中と分娩後の持続性細菌尿・腎盂腎炎への進展・早期産のリスクについて,妊娠中の無症候性細菌尿に対する抗生物質の効果を研究する.

検索方法:コクラン妊娠と出産グループにより維持・更新された比較試験の特別な登録より,研究は確認された.

選択基準:出生前の診断で無症候性細菌尿がみつかった妊婦を含むすべての比較試験で,無治療群とあらゆる抗生剤治療の比較がなされ,持続性細菌尿・腎盂腎炎への進展・早期産の頻度についてのデータが得られるものを候補とした.

データ収集と解析:割付方法,対象の特徴,介入方法,結果についての情報が,判定者によって適切な試験から抽出された.2×2表のオッズ比は,固定した効果モデルを用いてピートのone step法によって算出された.

主な結果:13研究が採用された.抗生物質療法は無症候性細菌尿をきれいにする効果があり(OR 0.07,95%CI 0.05-0.10),腎盂腎炎の頻度を減少させるだろう(OR 0.25 95%CI 0.19-0.32).抗生物質療法は早期産の頻度を減少させることにも関連がある(OR 0.60 95%CI 0.45-0.80).全体に研究は方法論的に強力なものではなかった.1つの研究を除き,他のすべての研究で割付方法が不適切かはっきりしないため,選択のバイアスの危険性があり,半分以下の研究で対象者と観察者が盲検法を行っているだけで,研究の実行と検出にもバイアスがあった.

結論:無症候性細菌尿の抗生物質療法は,妊娠中の腎盂腎炎のリスクの劇的な減少と関連がある.分析は,治療により早期産の頻度を統計学的に有意に減少させることを示しているが,方法論的に質の悪い研究であることは,この結果に対する確定的な結論を注意して引き出さねばならないことを意味している.治療による早期産の明かな減少は,早期産の原因として感染の関与があるという最近の仮説に一致している.しかし,無症候性細菌尿の治療が早期産を予防する,という基本的な機序のさらなる理解が必要とされる.無症候性細菌尿の管理に関する経済効果の正しい評価には,無症候性細菌尿の有病率と,異なる母集団における腎盂腎炎の発生のリスクの,より良い評価に関する最新の情報が必要だろう.


Citation: Smaill F. Antibiotics vs no treatment for asymptomatic bacteriuria in pregnancy. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:溝渕泰三/佐藤孝道)