初期乳癌における卵巣切除のレビューの抄録,ランダム化試験の概観

Ovarian ablation in early breast cancer: overview of the randomised trials

Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group

最終更新日:16/01/1998


目的:早期乳癌の女性患者で,卵巣切除が再発率及び死亡率に与える影響について,現在に至る長いフォローアップを続けているいくつかのランダム化試験を用い,評価を行った.本稿は早期乳癌共同研究グループが,現在15年のフォローアップになるわけであるが,3度目の5年間の系統的概要(メタ・アナリシス)を示すものである.

検索方法:早期乳癌共同研究グループが概要を示すための統一的な手法は既に述べられている.乳癌共同研究再評価グループモジュールで"EBCTCG"参照[1-3].

選択基準:1990年以前から数を増してきたすべての適切な方法で行われたランダム化試験は,手術可能な乳癌女性患者で,時にプレドニソロンを加えることもあるが,切除もしくは卵巣機能抑制したものと,何も補助療法を加えないものと比較した.実際のところ,再評価に用いるすべての試験は1980年以前に始められ,そのすべては外科的にまた治療のために切除がなされた.

データ収集と解析:1995年に,卵巣切除または機能抑制療法と対象を比較した,1990年以前に始められたすべてのランダム化試験の中で,それぞれの患者に付いて情報が集められた.データは放射線照射あるいは外科的な卵巣切除を評価した13のうちの12の研究で得られた.そのすべての研究は1980年以前から始められたものであった.1985年以後に始められた,薬剤による卵巣機能抑制を評価した4つの研究は除いた.閉経状態というのは各々研究の間で一貫して定義されていなかったため,主な分析は(「前閉経状態」と限るのではなく)50歳未満の女性に限って行った.エストロゲレセプターは,卵巣切除に細胞障害性の化学療法を加えたものと,その化学療法のみのものとを比較した試験に限り測定された.

主な結果:ランダム化の際,2,102人の50歳未満の女性患者は,そのほとんどが診断時前閉経状態にあり,うち1,130人の死亡と,加えて153人の再発が報告されている.15年生存率は,このように割付けた卵巣切除群で極めて著明に改善し(52.4%対46.1%,つまり女性患者100人あたり6.3人の死亡率の低下[SD2.3],2p=0.001),再発していない生存率も同様に改善していた(45.0%対39.0%,2p=0.0007).偶発的な問題は,どのサブグループの分析においてもわずかなもので,有意となるものではなかった.この改善は診断時に腋窩まで広がったもの(「リンパ節陽性」)と,広がっていないもの(「リンパ節陰性」)の両方で有意であった.卵巣切除に細胞障害制の化学療法を加えたものと,その化学療法のみのものとを比較した試験では,(たとえ原発腫瘍でエストロゲンレセプターが認められた女性患者でも)化学療法を行わない試験においてその有用性は低かった(ここでみられた生存率の改善は100人あたりにしてリンパ節陰性例で6人,陽性例で12人という割合であった).ランダム化の際,1,354人の50歳以上の女性患者は,そのほとんどが閉経中あるいは閉経後であり,生存率および再発生存率は有意でない改善の傾向のみみられた.

結論:50歳未満の早期乳癌女性患者では,少なくとも化学療法を行わない場合、機能している卵巣の切除が有意に長期予後を改善する.ホルモンレセプター値との関連性を評価するため,他の補助療法を行う場合に卵巣切除がどれだけの効果を加えるか,というさらなるランダム化試験によるエビデンスが必要である.


Citation: Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group. Ovarian ablation in early breast cancer: overview of the randomised trials. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:直江正保/大西丈二)