うつ病に対するオトギリソウの効果

St John's wort for depression

Linde K, Mulrow CD

最終更新日:09/07/1998


目的:成人の抑うつ障害の治療において,Hypericum(オトギリソウ属草本)の抽出物がプラセボより有効であるか,標準的な抗うつ剤と同等に有効であるか,また副作用が標準的な抗うつ剤より少ないかどうかを研究する.

検索方法:臨床試験はコンピューター化された一般的データベース(MEDLINE, EMBASE, Psychlit, Psychindex)または専門的データベース(Cochrane Complementary Medicine Field, Cochrane Depression & Neurosis CRG, Phytodok)を用いて検索された.さらに関連論文の文献を調べたり,製造業者や研究者に連絡を取った.

選択基準:以下の場合に臨床試験が採用された.(1)ランダム化試験であること.(2)抑うつ障害の患者を含んでいること.(3)オトギリソウの調剤(単独または他の植物抽出物との併用)をプラセボ,または他の抗うつ剤と比較していること.(4)抑うつ症状の評価スケールのような臨床的帰結を含んでいること.

データ収集と解析:患者,介入,帰結,そして結果についての情報が,少なくとも2人の独立したレビュアーによって,標準的方法を用いて抽出された.Hypericumとプラセボや標準的な抗うつ剤との有効性の比較についての主要な帰結変数は,反応した者の割合の比(治療群において反応した者の割合/コントロール群において反応した者の割合)とした.副作用に関する主要な帰結変数は,副作用を報告した患者数とした.

主な結果:全2291名の患者を含む27の臨床試験が包含基準を満たした.1168名の患者を含む17の臨床試験がプラセボと比較されていた(16は単独の調剤で,1つは4種類の他の植物抽出物との併用).1,123名の患者を含む10の臨床試験(8つは単独の調剤,2つはHypericumとvaleriana(吉草)の併用)は,Hypericumを他の抗うつ剤や鎮静薬と比較したものであった.殆どの臨床試験の期間は4週間から6週間であった.対象患者は主に,“神経症性うつ病”か“軽度から中等度の抑うつ障害”であった.Hypericumの調剤はプラセボに対して有意に優れており(割合比 2.47;95%信頼区間 1.69〜3.61) ,標準的な抗うつ剤と同等の有効性があった(単独の調剤 1.01; 0.87〜1.16, 併用群 1.52; 0.78〜2.94).副作用を報告した患者の割合は,標準的な抗うつ剤の44.7%に対してHypericum単独の調剤では26.3%であり(0.57; 0.47〜0.69),アミトリプチリンまたはデシプラミンの26.5%に対して併用群では14.6%であった(0.49; 0.23〜1.04).

結論:軽度から中等度の抑うつ障害に対する短期間の治療では,Hypericumの抽出物がプラセボより有効であるというエビデンスが存在する.Hypericumが他の抗うつ剤と同等の有効性を持つかどうかを証明するには,現在のエビデンスでは不十分である.より長期にわたる観察期間で,より厳密に定義された患者群においてHypericumと標準的な抗うつ剤とを比較し,長期的に副作用を調べ,異なる抽出物や用量と比較するなどの更なる研究が必要である.


Citation: Linde K, Mulrow CD. St John's wort for depression. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:秋山香乃/堀 士郎)